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令和 7年 9月号  261

キンメダイ


15年ぶりの内容見直し

FISH FOOD TIMESでは、キンメダイについて平成22年10月号 No.82 において「金目鯛焼き霜造り」のテーマで記していた。しかし、その時はキンメダイという人気ある高級魚を、単に「焼き霜造り」という側面だけで捉えていたので、その後あまりにも内容が浅すぎたと反省することになり、その内にキンメダイについて見直したいと考えていた。

それから15年が経過する間に、仕事に絡む形でキンメダイを扱う機会は何度もあって、その画像は少しずつ増えていたのだが、それらの画像を活用して記事にするタイミングがなかなか見つからず、今日までズルズルと来ていた。

ところが、最近になって筆者は来たる10月21日に旅行先の宿泊地として静岡県下田市が決まったのだが、その下田市は日本一のキンメダイ産地であることが分かったのだ。そうであれば下田市を訪ねる前に、キンメダイの予備知識を自分自身が勉強することも兼ねながら、9月号でキンメダイを記事として扱うには丁度良い機会だと判断し、いつもの店で1.3kgの大型キンメダイを1尾購入した。

 

そういうことで、キンメダイのことを調べをしていたら、下田市観光協会サイトに掲載されているキンメダイの資料を見つけた。このコンテンツがキンメダイのことをとても上手に要約していて、これがなかなか良いので、今回は先ずこれを活用させてもらい、その後にキンメダイについて筆者が出来るだけ詳しく記すことで15年前の説明不足を補足することにしたい。

下田のキンメダイ

下田市観光協会サイトの資料によると、下田港はキンメダイ水揚げ量日本一の港で、年間水揚量は1,000t近くにもなり、下田で水揚げされる8割がキンメダイと言われるほどである。下田港には「金目船」とよばれる漁船が数多く停泊しており、朝の市場はキンメダイの売り買いで活気に満ちていて、魚市場の床はずらっと並んだキンメダイで真っ赤になることもあるらしい。下田でキンメダイの漁が本格的に行われるようになったのはそれほど昔のことではなく、品質の統一や輸送手段の確保を行い、今や「下田のキンメダイ」というブランドを確立しているということだ。

下田市観光協会サイトでは、キンメダイについて以下のような分かりやすい画像付き資料があるので、このページでもそれをそのまま転載して紹介しておきたい。

 

 

上の説明図は、キンメダイに関する概略的な知識をほぼ把握できる良く出来た資料であり、筆者も今月号に載せ活用させていただいた。


キンメダイの特徴ある眼

キンメダイの最大の特徴は、やはりその語源となっている大きな金色の目であろう。キンメダイの眼は水深200mから800mの暗い深海で生きていくために、暗い海の僅かな光を少しでも多く集めようとして発達した結果、こういう特徴ある眼になったらしい。 

キンメダイの目には、輝板(きばん)とか、輝膜(きまく)とも呼ばれる反射膜が網膜の後ろにある。この反射膜を英語ではtapetumと称し、網膜を通過した後の光を反射して、再び網膜の光受容体を活性化させるため、眼が金色に光って見えるのだ。これは明るい場所で活動する動物には見られず、夜行性の動物や深海のような視界の悪いところで視界を確保する必要のある深海魚に見られ、例えば魚ではなく動物であれば、猫の目が夜間に光って見えるのも同じ現象である。

キンメダイのやり直し版である今月号では、最初にこの「妖しい光を放つ眼」を目立たせる商品にしてみたいと思った。

過去には、以下のような「眼球を残した切身」を作っていた。

 

キンメダイ切身
2015年10月
2016年1月
2019年5月
2020年8月

 

そして今回は、以下の商品を作ってみた。

 

 

商品名は「キンメダイ兜焼き切身」である。兜焼き料理までは以下の工程でおこなった。

 

キンメダイ兜焼き作業工程(内臓除去作業までは省略)
1,下身のカマ横をタスキ落としの形で切り入れる。 5,頭部中央は切り離さず、左右に拡げる。
2,上身側のカマ横を切り込むが、頭部の中央に深く切り入れず、頭部の切り口を極力真っ直ぐになるよう切り離す。 6,観音開きにして、左右に拡げ、商品が完成。
3,頭部を切り離した場所が、真っ直ぐになるよう意識して切り離した状態。 7,両面に振り塩をして、グリルで両面を弱火で10分ほど焼き上げる。
4,頭部の裏側から、ほぼ中央の位置に、刃先を押し込むようにして切り入れる。 8,皿に盛りつけて、キンメダイ兜焼きが完成。

 

筆者はこのキンメダイ兜焼きを食してみたが、もちろん最初にお箸を入れたのは眼球である。キンメダイの大きな眼にタップリあるドロドロとしたゼラチン質の透明のコラーゲンは、美味しいというよりも味のないゼリーを食べている感じであり、「これだけ食べたら、この頭もチョットは良くなるかな?・・・」と思いながら、DHA豊富なゼラチン質の部分を食べたのだった。真ん中にある白く変色した眼球そのものはあまりにも硬く、とても食べられないので念のため・・・。


キンメダイは、なぜ赤い?

キンメダイの目立つ特徴を二番目に挙げるとすれば、その派手な赤い姿であろう。この赤い色は概して深海魚の特徴の一つなのだが、深海魚たちはどうして赤い色をしているのが多いのか、それは以下のような理由があるからである。

海の中は、深度が深くなるにつれ、水が光を吸収していき、赤に近い色の波長ほど早く吸収され、水深が200メートル程になると、下の図のように海中は青一色の世界となる。そのようになる科学的根拠を、新潟県立自然科学館が発表している資料をもとに説明してみよう。

 

 

太陽の光には、可視光線(目に見える光)と赤外線や紫外線がある。その中で、可視光線は大きく分けて7色の光(赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫)が混ざり合って出来ている。光は水の中に入ると水分子に吸収されるが、全ての色が水に入ったとき、同時に吸収されるわけではなく、水分子には赤色や黄色の光は吸収しやすく、緑や青色の光は吸収されにくいという性質がある。 水の中を深く潜っていくと、一番早くなくなるのは赤色の光であり、反対に青色の光は海の深い所でも届くので、深海は赤色の光がほとんどなく青色の光ばかりなのだ。

 

 

このことを更に理解しやすい具体例をとして、新潟県立自然科学館が分かりやすく説明されているのが、上のリンゴを比較した画像である。上の左画像のリンゴは赤色の光を反射しているので赤く見えるが、右画像のリンゴに当たっているのは青色の光であり、反射する赤色の光がないので、青色の光は吸収されリンゴが黒っぽく見えている。深海魚が棲息しているのは光がもともと少ない深海であり、周りが暗ければ暗いほど赤色は黒くなって目立ちにくくなるのだ。 

つまり、深海で赤い色の魚体は光を反射せず、周囲から見えにくくなることから、他のノドグロ、キンキ、タカアシガニ、ベニズワイガニ、ホウボウ、ホッコクアカエビ、などの深海魚も総じて赤いのである。

キンメダイは、なぜ下田で多く獲れるのか

以下の図にあるように、下田市はキンメダイの漁獲高は非常に多いが、なぜ深海魚であるキンメダイがそれほど多く獲れるのだろうか。

 

 

キンメダイは、水深200〜800mの「かけ上がり(海底火山などの斜面)」と呼ばれる場所を好んで棲息するとのことだ。伊豆半島や小笠原諸島に連なる海嶺(海山が連なる海底山脈)は絶好のキンメダイ漁場であることは、下の2枚の図が示している漁場と海嶺がほぼ一致しており、そのことがよく理解できる。 

 

 

日本列島の東側では、伊豆諸島などを載せたフィリピン海プレートの下に太平洋プレートが沈み込む場所が日本海溝(最深部8,020m)であり、プレートに押されている側は持ち上げられている。例えば伊豆半島は60万年前の頃は独立した島であり、元々日本列島とはつながっていなかったが、二つのプレートの動きによって押されて島ではなく半島となり、あの富士山の日本一の高さも太平洋プレートの動きによって持ち上げられたことによる影響が大きいようである。

「かけ上がり」というキンメダイが好む環境を抱える漁場での漁は、下の図のように2種類の漁法がある。一つは伊豆半島東海岸の稲取などの漁港から近くの漁場に行って日帰りで操業する立て縄漁(一本釣り漁)であり、この漁法で漁獲されたキンメダイは「地キンメ」と呼ばれている。この漁法は1尾ずつを丁寧に扱うことことから高値となることが多いようである。いっぽう、八丈島などの沖合いまで行く漁船は10日ほどの期間をかける底立て延縄(はえなわ)漁であり、下田に水揚げされるキンメダイの大半はこの漁法によるもので「沖キンメ」と呼ばれている。

 

 

これまでの資料を辿っていくと、下田市がキンメダイ漁獲高日本一であることはほぼ理解できたのではないかと思われる。下田市は近くの海域にこういう他ではあまり見られない漁場を抱える恵まれた環境にあり、そのメリットを活かしながら「下田のキンメダイ」というブランドを確立してきたのだと思われる。


赤い色を活かす商品が常識か

上記してきたように、キンメダイの特徴の一つは「赤い色」であり、この赤い色を活かした商品や料理にするのが常識的なのかもしれない。筆者もこれまでにキンメダイの赤い皮を湯霜にしたり、焼き霜にしたりして、以下のような刺身や鮨を何度も作ってきており、たぶんこういう風に赤い皮の色を活かした商品というのは間違いなく見栄えがすると思う。

 

 

 

下の商品画像は今回作った切身だが、やはりキンメダイの赤い皮の色はその色が派手であるだけに、皮があるととても目立ち存在感がある。

 

 

基本的にキンメダイは「赤い皮を活かした商品」がベターだと思われ、そのこと自体に筆者も異論はない。それはそれで良しとして、それだけでは15年前からあまり変化がないではないかと言われかねない。

そこで今月号では、キンメダイを赤い皮を除去して皮なしの商品を作ってみた。

 

皮なしキンメダイにぎり鮨作業工程
1,三枚におろした下身の腹骨を欠き取る。 5,血合い骨の横に切り込みを入れる。
2,皮下脂肪の程度が分からないので、皮引きは内引きでやってみた。 6,血合い骨を除去する。
3,皮下脂肪はあまり豊富ではなく、魚肉自体の方に多いと感じた。 7,左の姿勢で、下身の腹身だけを鮨ダネにする。
4,皮があった側を下に向ける。 8,にぎり鮨にする。
皮なしキンメダイにぎり鮨

 

次は、下身の背身を使った刺身の方であるが、これについては少し異質な形になるけれど、商品の付加価値を高めるための「あしらい」の作業工程を紹介することにしよう。

 

皮なしキンメダイ刺身のあしらい作業工程
1,皮引きをして除去した皮を沸騰したお湯に入れる。 8,皮を丸めて細く切り刻む。
2,しっかりと火を通す。 9,キュウリの端を落とす。
3,皮が丸まったら、氷水に入れる。 10,端から2〜3pほど削ぎ切る。
4,吸水紙の上に移し替える。 11,削ぐことを5回繰り返して、5角形にする。
5,皮の上側にも吸水紙を被せる。 12,削いだ切り口の上1〜2pの所に、5角形に沿って深く切り込みを入れ、同じことを5回繰り返す。
6,吸水紙を交換し、水気を出来るだけ除去する。 13,5角形の切り込みから、指先でキュウリを折って、花の形にする。
7,水気をしっかり切るためには、冷蔵庫で暫く放置するのも良策。 12,安定感を出すために台座部を切り整え、キュウリのサビ受けが完成。ワサビの代わりに刻んだ皮を入れた。
キンメダイ刺身

 

これでキンメダイの皮を除去した鮨と刺身は完成した。上記していたように、これまでキンメダイは皮付きでの商品を前提としていたので、ある意味で新鮮な感覚を味わうことが出来た。

いっぽう、今回購入したキンメダイの上身側半身がまだ残っているが、これも皮なしにしてしまうとキンメダイらしさがなくなってしまうと感じて、こちらは皮付きのまま商品として仕上げ、これをムニエル料理にすることにした。

 

キンメダイバターポン酢ムニエルの調理工程
1,キンメダイ皮付き半身の両面に塩コショウをする。
2,小麦粉は軽く表面を覆う程度にすることで、キンメダイの皮の赤さを残すようにする。
3,皮側を少し焦げ目が付くまで焼き上げる。
4,魚の旨味が残っているフライパンに、バターとポン酢、酒、ミリン少々を加えソースを作る。
5,仕上げにバターポン酢ソースをかけ、キンメダイバターポン酢ムニエルが完成。

 

実はパターポン酢ソースでムニエルを食べるというのは、筆者は初めてのことだったが、これがなかなか美味しいのである。キンメダイという魚の素材の良さを打ち消すことなく、言わば日本人の舌にマッチする日本人好みのムニエルだと感じられた。


締め括り

さて、そろそろ今月号も締め括りにしたいと思う。15年前のリベンジになったであろうか・・・。

実はこの他に、骨付き半身の塩焼き料理や鍋用切身の商品化作業工程なども画像として存在している。しかし、あまり色々と手を出すと、何を言いたいのか焦点がぼけてしまうのではないかと考え、それらを掲載するのは省略することにした。それでも、今回は15年前の分に比べると、自分としてはキンメダイという魚の面白い側面をそれなりに紹介できたのではないかと思っている。日々水産商品の販売に汗しておられる読者の皆さん方に、キンメダイ販売促進のために今月号の中身が少しでもお役に立てれば嬉しいのだが・・・

今回の場合、下田市観光協会、新潟県立自然科学館、伊豆半島ジオパークなど、各ホームページに記載されている様々な資料を参考にして、色々と勉強させてもらいながら今月号を書き進めることになった。ネット上に発表されている各社のこういう資料のお陰で、今月号も何とかそれなりの形になったと思われ、この場を借りて各社関係者の皆様にお礼申し上げたい。

来たる10月21日夜の下田では、そのお礼の気持ちを含めながらキンメダイなどをしっかり食したいと考えている。また、最後にこれはどうでも良い余計なことなので気にしないでほしいが、10月21日の前後にあたる20日と22日は焼津市と沼津市に宿泊し、主に駿河湾で獲れる深海魚を始めとした様々な魚を食べるように計画している。この辺のことは11月号において毎年恒例の形で記すつもりなので乞うご期待。


 

水産コンサルタント樋口知康が月に一度更新している

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更新日時 令和 7年 9月 1日