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平成28年 7月号
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平成28年 7月号
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平成28年 6月号
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平成28年 6月号
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No.143-2 海を隔てた魚食の違い
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No.131 ロブスター刺身姿造り(平成26年11月号)
No.130 真サバ炙り平造り(平成26年10月号)
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平成28年 9月号 153

アオハタ

アオハタ

アオハタ薄造り刺身


この魚は標準和名のアオハタよりも、一般的にはアオナとかキアラ、キハタ、ナメラ、タカバなどの地方での呼び方のほうがよく耳にする名前で、スズキ目スズキ亜目ハタ科マハタ属に属している。

アオハタ

FISH FOOD TIIMES の既刊号では、No.149 スジアラ炙り刺身(平成28年 5月号)No.108 アラちゃんこ鍋(平成24年 12月号)42真ハタの薄造り(平成19年6月号)、これまで合計3度マハタ属の仲間のことを取り上げてきたので今回で4度目となる。

日本において魚屋さんが販売の対象として扱っていて、料理店でも料理材料として使われているハタ科マハタ属の仲間は、日本各地でアラやクエとも呼ばれ、沖縄ではミーバイ、南西諸島でネバリなどとも呼ばれていて、何しろ数えると30種類以上もあるのだから、 FISH FOOD TIIMESで取り上げられる機会も増えるというものである。

アオハタはマハタ属の中ではあまり大きくならない小型のハタであり、水揚げ量は最近かなり増えてきているようで、このところ比較的手に入りやすくなったことから店頭での価格は昔より随分とこなれた価格で提供されているのを見ることが多くなった。

一般的にハタの仲間は高級魚の代名詞なのだが、アオハタは仕入れ時のkg単価が他の大衆魚より多少高くても、比較的小型のものが多いことから1尾あたりの売価はそれほど高くならず、魚売場の裸売り対面コーナーでの「見せ筋商品」として陳列して見せるのに、仕入れ負担があまり重くならない便利な魚として担当者に重宝がられている魚でもある。

対面裸売り

最近スーパーの魚売場では対面裸売りコーナーを備える店が増えてきているけれど、新たに裸売りを始めた店はもともとその手法に慣れていないだけに運営には苦労しているところも多いようだ。上の画像は筆者の指導先の一つで対面裸売りをしている様子だが、この店のように10kgほどの大きさのアラ(クエ)のような1尾の売価が25,800円もする高価な魚を品揃えしても、その運営を難なくやっていける店というはそれほど多くない。

上画像のほぼ中心に並べられているアオハタは1尾2,500円と1,480円の売価がつけられていて、その上にデーンと置かれている大きなアラの十分の一以下の価格であり、白身の高級魚としては手に入れやすい存在として位置付けられることは理解できるであろう。この生魚裸売りコーナーには、この他に15,000円の天然ブリ、7,000円の天然ダイなども品揃えされているので、2,500円や1,480円のアオハタは手に届かない高価な魚ではなく割安な魚に感じさせるように見せる「松竹梅の法則」が使われている。

生魚の対面裸売りに不慣れで未熟な魚売場は、いわゆる「茶を濁す方法」でなんとか対面裸売りの格好をつけようとすることが多いが、そんな付け焼刃的なやり方をして誤魔化そうとするから対面裸売りが成功しないのである。対面裸売りがなぜ必要なのかの根本的な考え方を理解しないままこれを実行しようとしても、そのうちに対面裸売りの売場そのものがお荷物となって崩れ去っていくのが関の山だ。

生魚の対面裸売りがなぜ必要なのかについて、FISH FOOD TIIMESでは 平成23年 1月号( No.85) の中で「今年度水産部門指導にあたって、魚売場は対面販売が・・・」という文章を載せた。この文章が食品スーパー業界の経営と運営の専門誌である「食品商業」編集部の目に留まり、筆者は平成24年9月号の食品商業に「丸魚対面販売と調理サービス強化(改装・導入で実現した前年比200%)」という文章を記すことになったという経緯がある。

その発端となった平成23年1月号の文章を少し長いけれど、魚売場の対面裸売りを理解してもらうため、以下に再掲載したい。

対面販売は黄金の法則 <樋口知康 文責> 平成23年1月

水産部門の指導という仕事に携わってから20年を超え、最近改めて強く感じていることがあります。
それは「対面販売の重要性」というものについてです。
魚売場の一角に「対面販売」のスペースを設け、そこでの接客を重視した形で魚を販売しているところは、総じて評判の良い魚売場であることが多いのです。

パックした魚を並べるのが仕事?
スーパーの魚売場というのは、歴史的にプリパッケージでの販売方法と併行した形で進展してきましたから、ある意味で「パックした魚を並べるのが仕事」という風に思い込まれてきた側面があります。
そのような歴史を経てきた結果、最悪の例では昼までにバタバタと急いで商品を出し終えたら、午後の仕事は翌日の商品陳列を合理的に進めるために「翌日分の仕込み」作業をすることに精を出し、夕方のピーク時であっても小売り業の販売人として「商品を売込む」ことはほとんどないという、小売業ではなくまるで製造業のような働き方をする魚売場も珍しいことではありません。
この「仕込み商売」というのは、昔から肉部門では当たり前のように行われてきた手法のようで、前日の内に仕込みという前段取りをしっかりやっておけば、翌日の朝の段階からほとんどの商品が並ぶことになり、開店時のチャンスロスを起こしにくいというメリットを享受してきたと聞いています。

魚の仕込み商売
その肉部門における成功手法というのを、ある時期に何処かで誰かが魚部門に持ち込んできたことから「魚部門の凋落」が始まったのではないかと私は考えています。
肉部門の商品というのは、基本的に「牛豚鶏の3アイテム」を何百種類ものSKUに細かく展開して、様々な料理用途に展開していけば良いのですから、お客様はプリパッケージされた商品であっても、それほど詳しい説明を求める必要はありません。
ところが魚はどうでしょう。肉のように3アイテムなんかではなく魚部門全体ではSKUではなくアイテム(魚種)で「100アイテム」くらいは普通であり、生魚だけに限ったとしても最低で30アイテムくらいは珍しくないのです。
しかもそれらの魚が肉のように料理用途別の商品になっているかというと、そうではなく生魚などは「丸のまま」ほとんど包丁が入れられていない「商品」も当たり前のように並んでいます。
肉の商品というのはお客様がこれらを買って帰って、下味をつける簡単な料理の準備をして、フライパンなり鍋なりに入れたらすむというのに、魚売場に並んでいる商品はどうでしょうか。普通のお客様にとってはとてもハードルの高い「魚の調理」を平気で求めているような商品が、魚売場には数えきれないほどたくさんパックされたままで並んでいるのです。
そうであれば、肉部門のように全てのアイテムを100%SKUに調理すれば良いではないかとなると、残念ながらそれを可能とするには「広大な売場スペースとたくさんの調理作業人員、そして多くの作業時間」が必要となってしまいますから、これは言わば夢物語の世界となってしまいます。

生魚を忌避するのか、強化するのか
その対応策として執られてきた手法の一つが「調理済みの冷凍魚や塩干魚を増やして、調理が必要な生魚のアイテムを極力絞り込む」ということであり、多くの大手スーパーと呼ばれるところでは、基本的にこの方向性の手法を執ってきました。
そして今やその結果として、大手スーパーと称されている会社の店で、魚売場として素晴らしい魅力を持っていると評価されるところはほぼ皆無という状況に追い込まれてしまったのです。
そのいっぽう、全国各地のいたるところには「魚売場が店の看板」として大きな魅力を放っている中小のスーパーがアチコチに点在しており、それらの魚売場の魅力を店の特徴としているスーパーの中には、お客様から「魚はここでしか買えない」というような絶大な支持を受けているところもあります。
全国各地に点在する「魅力ある魚売場を持つスーパー」を十羽一絡げで評価することなんかとても出来ることではなく、それぞれの店にその特徴や良さを持っているのですが、概してこのような中小に属する規模の評判の店で言える事の一つは、大手スーパーが強化することを躊躇っている「生魚」に力を入れているということです。

対面売場が存在する意義は理解されているか
そして生魚の販売方法の共通した特徴として、もちろんこれは全てではありませんけれども、魚売場の一角に「対面売場」を設けていることが多いのです。
対面売場にも色々な方法があって、生魚を氷の上で裸売りするオーソドックスな手法から、生魚をフィルムで巻いて疑似的な裸売りをしているところ、そしてパッケージ商品を集合陳列して対面販売に近い形を執っている店、それぞれ店独自で色々な工夫がなされています。
なかでも、やはり何と言っても対面販売の王道というのは「生魚を氷の上で裸売りするオーソドックスな手法」にこそあるようで、そこではケース後ろのパイプや天板に置かれた機械から直接ミストが出ていたり、また対面売場の後方には壁がなくオープンの作業場になっていて、その作業場から対面売場の前のお客様のところへ、従業員がササッとフットワーク良く出てくることが出来ます。
このようにフットワーク良くお客様のところへ近寄って接客が出来るようにと、魚売場にはこのような構造の対面売場が設けられているにもかかわらず、この与えられた構造を充分に活かそうとしない従業員の姿勢や態度というのがあると、これには本当に残念なものを感じます。
ミスト発生器のような機械設備もそうなのですが、どんなに優れた高価な機器が売場に備えられていても、そこで働く人がその機械や設備の意味を理解して、これを有効に活かそうとしないならばまさに猫に小判でしかありません。
つまりこれは、たぶん従業員のみならず、その上司や店長、ひいては経営トップまでをも含めて、対面販売の重要性や意義というものが、しっかりと理解され整理されていないから、このようなことになってしまっているだろうと思います。

対面販売は黄金の法則
対面販売は魚売場にとって非常に重要なことだと私は考えているのですが、これをここで誰にでも納得いただける長い論文のような説明をするのは、紙面の目的とすることからはやめておこうと思います。
これまでの私自身の魚小売り現場での経験や、魚のコンサルタントとして学んできたこと、更にはここ数年何度も足を運んで見聞してきた欧米を始めとする諸外国の魚事情などから、最近自分の頭の中で確信するに至ったものがあります。
それは魚売場にとって対面販売は黄金の法則だということです。
対面販売は「魚売場の全てではない」けれども、これは「魚売場にとって、なくてはならない」販売手法だと思うようになったのです。
魚という商品の持つ特性からすると、肉部門の物真似のような販売方法をやっている限り売上は伸びないのであって、魚が持っている根本的な資質でありながら、それはメリットであり、逆にデメリットとしても存在している側面というものを、頭から否定することなく柔軟に受入れながら活かしていくことが必要です。
魚売場の歴史はこれまで効率的な販売方法を確立するためにパック販売などの手法を導入してきたのですが、その効率的だと考えられてきた手法を押し進めることによって、お客様が魚の商品はこうあってほしいと望むニーズから離れてしまうことも生じることになり、これがネックとなって魚の売上は伸びなくなってしまった側面もあると考えます。
つまり魚の商品は、肉の商品のように数少ないアイテムを数多くのSKUに展開することでお客様のニーズに応えるような事は「魚の根本的な特性からして出来ない」のです。
魚の商品というのは、プリパッケージによる商品展開によってお客様の満足度を高めることには限界があるとするならば、それに替わり得る販売方法を肉とは違った方法で確立しなければ、魚の売上はこの先伸びていくことはなく萎んでいってしまうことも考えられます。
こういう魚の根本的な特性を理解した上で、プリパッケージでは実現不可能な販売方法がプラスアルファの設備や体制として必要だと認識したスーパーが、今や全国各地の魚売場を看板とする繁盛店となっているのではないかと思います。
私は魚のプリパッケージの販売方法というのを、そもそも頭から否定するような考えを強調しているのではなく、プリパッケージによる魚商品の販売法ではお客様の満足度を高めることが難しい部分を、対面販売という販売手法によって補っていく必要性があるということを強く主張したいのです。

 

スーパー業界の過去5年ほどの魚売場の動きを振り返ってみると、新店オープンの時に生魚対面裸売りコーナーを導入したり、改装に際して新たにこれを設けたりするところが増えてきており、それを契機として売上が順調となっている会社がある一方で、根本的な考え方が理解されていないために、魚売場のお荷物となっているところもあるようだが、上記の考えからするとスーパーの魚売場に「生魚対面裸売りコーナー」は基本的に必要なのである。

生魚対面裸売りコーナーを上手に運用できていない会社は、対面売場に陳列されている魚をそのままパックしても何ら問題はないような生魚が、申し訳程度ほんの少しだけの数がパラパラと氷の上に並べられているだけで、それらは単に「生魚が姿のまま飾られている」にすぎないことが多い。それも、養殖鯛、イカ、サバ、アジなど、どこの競合店でも普通に品揃えされている魚がトレーに入っていないだけであり、しかもそれらの魚が売れないからと従業員から見向きもせずそのまま放置されているようでは売れないはずだ。

そんな方法で茶を濁すのではなく、対面裸売りでなければその良さを発揮できない生魚を品揃えすべきであり、それは例えばアオハタの品揃えも豊富感を出すには格好の魚となるし、他社とは違う高級感も打ち出しての差別化ができることになる。

アオハタを品揃えするとなると、売価は最低でも2,000円前後を覚悟しなければならず、そういう価格の魚が次から次へと売れていくのを期待するのはよほどの繁盛店でもない限り無理というものであり、それを何日も飾って最後に値下げ処分をして半額で処分するというのは愚の骨頂というものである。裸売りで陳列するのは1日が限界であり、理想は朝陳列して昼過ぎには引っ込め、午後には切身や刺身や鮨、さらには煮付けや塩焼きなどの魚惣菜に変化させて閉店までには売り切ることだ。当日売り切ることが出来ないならば、翌日にそういう商品に変化させていかなければならない。

アオハタというアイテムを丸のまま売り切ることが出来ないならば、このように切身、刺身、鮨、魚惣菜などのSKUに展開していかなければならず、対面販売を実施する店は生魚を消化するこういう様々な手段を持っていることが重要になる。もしその店が付加価値の高い商品である刺身や鮨といった商品に対するお客様の評価が高ければ非常に有利であり、多少価格の高い高級魚を仕入れても刺身や鮨に変化して無理なく消化していけることになる。

つまり生魚の対面裸売りを成功させるためには、どこの競合店にも品揃えされていて、その魚の品揃えでは差別化できない大衆魚を扱うことのできる程度の技術や知識のレベルでは難しいということであり、アオハタのような高級魚だけではなく、簡単には手に入らない珍しい魚や、あまり一般的ではない未利用魚などを含めた様々な魚に対応できるような知識や技術を磨いていくことが重要なことになるのだ。


生魚の対面売場に黄色いアオハタが品揃えされていると、他の魚とは違う一種独特の色合いによる存在感があり、それだけでお客様に少し高級な良い魚を品揃えしていることをアピールできるのが一つのメリットだが、大きなアラ(クエ)のようにとても手が出ない価格でもないので、高級なイメージを打ち出しながらも値頃感を失わない魚でもあるので、高級魚としては比較的取り組みやすい魚種の一つに数え上げられる。

しかし、やはりそのまま1尾で売るとなるとそれほど簡単ではない。その身を刺身や鮨ですべて使い切ることが出来ればそれが一番値入れが取れる方法だと思うが、鮨を扱っていないなどのハンディがあると半身は切身で売らなければならないということもあるだろう。以下の画像は比較的小型サイズのアオハタの切身と刺身の商品化工程である。

小型アオハタの煮付け鍋用切身の商品化工程
アオハタ アオハタ
1、鱗を取り、エラと内臓を除去する 6、中骨のない方の半身の頭部を除去する。
アオハタ アオハタ
2、頭をつけたまま、尾の方から包丁を入れる。 7、中骨がついている身の背ビレを切り離す。
アオハタ アオハタ
3、頭までそのまま包丁を入れ、頭を半割りにする。 8、背ビレと尻ビレを除去して頭部を切り離す。
アオハタ アオハタ
4、つながったままの尾ビレ付近を切り離す。 9、背側を優先して平行に幅をとって切り離す。
アオハタ アオハタ
5、頭をつけたままで、二枚におろした状態。 10、骨付半身は出来るだけ均等な大きさの切身にする。
アオハタ   アオハタ
骨付半身で2パックできた切身
 
皮のボイルをあしらいとして活かす
アオハタ アオハタ
1、包丁で除去した皮を熱湯でボイルし、氷水で冷やす。 3、ボイルした皮を細く斬り刻む。
アオハタ アオハタ
2、皮を除去した骨なし半身 4、切り刻まれたボイル皮。
アオハタ
ボイルした皮をあしらいにしたアオハタの薄造り刺身

 

これから気温が低下してくる季節を迎え、アオハタを鍋にすれば最高に美味しい料理となる。また透き通った白身の刺身は平造りでは商品原価が高くなってしまうので、やはり薄造りが基本になると思われるが、さすがにハタ類の仲間であるだけに、同じような美味しさを何十キロもの大きさがなくても味わえるのだ。

しかしベースとして決して安くはない魚だけに、刺身に盛り付ける量も限られ、ボリューム感では勝負できない商品となる。そこで付加価値を高めるために旨味が凝縮された皮をボイルして切り刻み、これをあしらいとして添付すると巻頭画像のような薄造り刺身が出来上がるのである。

アオハタは大衆魚ではないけれど、その大きさも手頃な高級魚として魚売場のイメージアップに活用できるはずである。資源が枯渇し数が激減しているという話も聞かず、水揚げ量は安定しているようなので、身近な高級魚として活用していきたいものである。


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更新日時 平成28年 9月1日