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No.242  活き締めホッケ料理    令和6年 2月号
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令和5年 12月号
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令和5年 11月号
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令和5年 10月号
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令和5年 7月号
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令和5年 5月号
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令和5年 4月号
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令和5年 3月号
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令和4年 10 月号
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No.215 伊勢エビを求めたが  令和3年11月号
No.214 正露丸で安心、胡麻サバ  令和3年10月号
No.213 魚屋は真夜中に刺身を引き始める  令和3年 9月号
No.212 カツオ・イカ紅白刺身盛り合わせ  令和3年 8月号
No.211  肝なしウスバハギ刺身&鮨  令和3年 7月号
No.210  でかいタチウオ   令和3年 6月号
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103 Bad money drives out good money(平成24年7月号)
102 コチ薄造り(平成24年 6月号)
No.101 キビナゴ開き造り(平成24年 5月号)
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令和 6年 4月号  244

ニシン

生ニシン


ニシン豊漁

2024年3月下旬現在、下の表が示しているように北海道日本海側でのニシンの漁獲が好調なようである。最終的な数字は漁期が終わってから確認するとして、地域別に好不調の違いはあるものの全体的には平均すると前年より40%増くらいになっているとのことである。しかも平均的な魚体サイズは30〜32p、平均重量が330gから480gほどの大型が多く、カズノコの原料となる雌の平均卵巣重量は100g前後の完熟したものが多いとのことである。

3月時点での札幌魚市場の取引価格は、生鮮用の特大サイズが雌で500円/kg前後、雄で200円/kg前後で推移しているようで、この価格は前年とあまり変わらないようなのだが、北海道から出荷された全国の魚市場では前年より30%ほど安値で推移しているようである。

一時期は幻の魚とも言われたニシンは、下のグラフのように十数年前の頃から漁獲量が漸増しており、今年はその傾向がさらに強くなっているのである。

このグラフにあるように、ニシンは年々着実に資源回復をしていて、水産小売関係者ならば生鮮魚介類のなかの販売アイテムとして、既に無視できない存在になっていると見るべきだろう。このことは、北海道の地においてはもちろん当然の事実だと思われるが、北海道以外の地域において塩カズノコや身欠きニシンなどの水産加工品として馴染みはあっても、生鮮魚介類のなかの生魚の一つとしてニシンを店で販売するということは、まだ普通のことにはなっていないと思われる。

FISH FOOD TIMESでは、令和2年2月号No.194でニシンの資源が回復している状況を捉え、以下のよう記していた。

ニシンの漁獲が往年の100万d近くまで復活するのかどうか今のところ不明であり、本格的なニシン漁獲復活はまだ夢物語のレベルでしかないかもしれない。しかし同じように多獲性魚種のマイワシは一時期「幻の魚」と言われていたが、近年はめざましい勢いで漁獲が復活している例もあり、ニシンも同じように今後どんどん勢いを増してくる可能性も有り得ると思われる。

令和2年の2月から始まるニシン漁はどうなるのであろう、今年も群来が見られるのであろうか。もし北海道のあちこちで何度も群来が見られるようであれば、そのまま冷凍や身欠きニシンなどの加工へと回すのではなく、生鮮出荷にも力を入れてほしいものである。

ここ数年、秋サケやサンマが歴史的な不漁となっている影響も少なからずあり、魚売場の売上げは漸減傾向の不振が続いているが、魚売場ではマイワシ以外にも大衆的な価格で販売できる商材を渇望している現実があるので、ニシンを全国各地に生鮮出荷すればそれなりの売上げにもつながるはずである。

先にも記したように、沖縄の魚売場に北海道で水揚げされた魚が翌日には納品できる時代である、昨今の急激に進歩した鮮度管理技術を活用すれば、沖縄でニシンの刺身や鮨が食べられるようにすることは不可能ではないはずであり、現に北海道産のマイワシは沖縄の魚売場でも刺身や鮨で販売されているのだ。

身欠きニシンという商材を否定するわけではないが、大昔から続いてきたニシンの保存食品としての知恵を今になっても後生大事に抱え続けるべきなのだろうか。今の時代にはそれに相応しい食の提案があるはずであり、そのためにはニシンを生のままで生鮮出荷することに力を入れることによって、ニシンの料理提案の幅が格段に大きくなるに違いない。

小骨が多いニシンを生の状態で美味しく食べるためのコツは、今月号で紹介した「骨切り」もその一つに挙げられると思われる。こんな簡単なことを面倒くさいとか言って嫌がらずにやってみてほしい、事前にこのような処置をした商品を販売すれば、お客様はきっと喜んでくれるはずだ。

 

この時に筆者がアピールしたかったことは、既に安定的な資源として回復してきているマイワシのように、資源回復の兆しが見えているニシンを魚売場の重要な生鮮商品として拡販に着手すべきということだった。その時の内容としては、ニシンを三枚おろしにして骨切りにした商品化提案までをおこなっていたのだが、刺身や鮨を含めた商品提案までは手付かずだったので中途半端な感は拭いきれなかった。そこで、今回はニシンのことに関してもう一歩踏み込んだ商品提案をおこない、生のニシンを小売レベルでもっと大きく拡販できるようなヒントを提案してみたいと思う。


北ヨーロッパでの高い存在感

ニシンは世界中で毎年200万トン前後漁獲されていて、特に北大西洋、バルト海、北海に多く棲息しているため、この海域での漁獲が多い。ニシンは2000年以上前から北ヨーロッパを中心としてよく食べられてきたとのことであり、特に北欧三ヶ国、デンマーク、ドイツ、オランダなどの国がニシンの主要な消費地となっている。ニシンは燻製や塩漬け、酢漬けなどに加工されていて、その中には強烈な臭いを放つことで世界一臭い食べ物として有名なシュールストレミングというニシンの塩漬け缶詰などもある。以下の画像が主にフィンランドやスウェーデンなどで生産され消費されているシュールストレミングである。

ニシン

筆者は2017年10月末フィンランドのヘルシンキに立ち寄ったことがあり、北ヨーロッパでのニシンの販売状況を知る一つの事象として、そこで筆者が見てきたニシン販売の断片的な事実を簡単に紹介しておこう。

ヘルシンキの Kスーパーマーケット。

下の画像が魚売場の一部。

その店の魚売場では、下の画像にあるように燻製のニシンが冷蔵Rケースの中で2種類陳列されていた。しかし、それは何がどう違うのか筆者は理解できなかった。そして、残念ながら生のニシンの写真は撮りそこねた。

ニシン

 

次にヘルシンキ大聖堂前の広場では、屋台のような魚屋さんが二つあり、鮮魚店と燻製魚専門店だった。

大きなトラックの荷台にある冷蔵ケースを備えた鮮魚店は本格的な品揃えで、屋台という簡易なものではなく、その移動販売車はまさに立派な魚屋さんだった。

その店では、陳列ケースのほぼ真ん中ほどの特等地にニシンが陳列されていて、画像の買物中の女性のお客さんもニシンを購入している様子だった。以下の画像の丸く強調した部分に生ニシンがある。

ニシン

次は燻製魚専門店である。この店は鮮魚店より小さめで、小型サイズのトレーラーを店にしていて、人の良さそうなおじさんが一人で店を切り盛りしているようだった。その陳列ケースの中には燻製の魚がズラリと並んでいて、筆者はこのように燻製の魚だけがたくさん品揃えされている状況というのは、まったく予想していないことだったので本当に驚いた。日本で言えば干物屋さんの移動販売車というところであり、そういう小さな店がこれだけの品揃えをしているのである。まさに北欧フィンランドの人々が食べている魚事情を象徴的に表している感じだった。

下画像がその店で売られていたニシン燻製である。フィンランド語で SUNDOMIN SAVU SIIKA と表示されていたので、たぶん想像するに「サンドミン産ニシン燻製」という意味なのだろうと判断した。

ニシン

 

ヘルシンキはイタリアを訪問した帰りの行程で1泊立ち寄っただけなので、あまり詳しい魚事情は調査できていない。イタリアへと旅するに当たって福岡から直行便の往復はフィンエアを利用したことから、フィンランドの首都ヘルシンキ経由となったのだ。行きの行程は福岡からヘルシンキへ10.5時間、ヘルシンキからローマへ3.5時間、ローマからヴェネツィアは1時間ほどかかり、トランスファーの時間や移動時間を含めると、ホテル到着まで実際にかかった所要時間はほぼ24時間という爆速の強行スケジュールでヴェネツィアまで直行したのだった。しかし帰りについては、ローマを出発してヘルシンキにストップオーバーの形で1泊し、簡単な観光も楽しむゆっくりの行程をとったのだった。

そのフィンエアのヘルシンキから福岡までの帰国便で提供されるビジネスクラスの食事も、まさにフィンランドらしくニシンづくしの内容だったので、ヨーロッパのニシン料理の一環として紹介しておこう。

フィンエアのニシン料理(ニシンのみの説明)
ニシン ニシン
酢漬け 炙り焼き
ニシン ニシン
燻製 マリネ

 

こうして、フィンランドにはほんの僅かな時間ではあったが、この地におけるニシンの位置づけを見てみると、ニシンはこの国にとってまさに無くてはならない国民食であろうことが理解できたのだった。

ニシンはヨーロッパにおける食糧としての重要性という点でジャガイモや小麦に匹敵する存在とのことである。その重要性と光沢のある灰色の皮から、ニシンは昔から「海の銀」として知られていて、主に北ヨーロッパの食べ物として連想されると思うけれど、今では世界中でメインディッシュやサンドイッチ、サラダなどに幅広く使われているようだ。 


日本におけるニシンの存在感

では、日本においてのニシンの存在感と位置づけはどうかと言えば、フィンランドのように深く食生活に入り込んでいるとは言えないだろう。日本でニシンと言えば、海のダイヤモンドと称されるカズノコは全国に通用する食材と思うが、身欠きニシンについては全国的に定着しているとは言えない。そのカズノコについても、長い間カナダ、アラスカ、ロシアといった外国から輸入されたものがほとんどを占め、国産カズノコはほぼ手に入らない時代が長く続いていた。ここ数年は国産も手に入れやすくなっているけれど、価格は以前のまま最高価格帯を維持して販売されている。 

カズノコはあのポリポリの食感が醍醐味である。それなのに、カズノコの価格があまりにも高いということが発端となって、ポリポリの食感がない大西洋ニシンのカズノコが輸入され、比較的安い価格で販売されるようになってからもう何年になるだろう。 

筆者はカズノコが大好きであり、ポリポリの食感こそがカズノコであって大西洋ニシンの卵はカズノコではないと思っている。ところで、同じニシンなのに太平洋と大西洋でこのような食感の違いは何故出るのかご存じだろうか。その理由は、先ず太平洋ニシンが卵を産み付けるのは、海の水流で漂うように生えているアマモや昆布など海藻の上である。だから水中でユラユラと動く海藻から落とされないようにするために粘着力が高く、そのために卵同士の結着力があることから、固さを感じられ歯ごたえのよい食感を楽しめるのである。いっぽうで、大西洋ニシンは岩や砂地に産卵するため、動きのある海藻に産み付けるほどの粘りは必要なく卵同士の結着も弱くなり、そのため大西洋産カズノコの食感は太平洋産よりも柔らかいのだ。 

この違いから、今後日本のニシン漁獲高が順調に増え続けるかどうかを占う鍵は、北海道近辺の海で海藻の昆布やアマモなどが豊富な形で生育できる環境が形作られるかどうか、そのことが重要なことになってくると思われる。昔ニシンが100万トン近くも獲れた時代は、まさに規格外の桁外れの量のニシンが押し寄せていたとのことだが、このところはニシンが漸増傾向にあり豊漁だという事実があるとしても、昔のような爆発的な勢いまでは結びついていない。その要因の一つは、海の中が昔ほど豊かな海藻で満たされていないことが原因として挙げられるのではないかと感じている。

しかし、それにしても2024年は過去数十年の中で最高のニシン水揚げが期待されているようで、福岡の地にも鮮度が良くて刺身や鮨にできる生ニシンが入荷するようになり、価格もこなれたものになっている。いよいよ生ニシンを刺身や鮨を始めとして、他にも様々な料理で食べられる時代がやってきたのではないかと思われる。以下に、今回筆者が手に入れた生ニシンを前回のFISH FOOD TIMES 令和2年2月号No.194での内容を補完する意味合いを込めて記していきたいと思う。


ニシン料理

今月号で 令和2年2月号No.194 の内容と重複しないようにすることを頭に入れながら記していくけれど、説明の流れ上で似たようなこともあるかもしれないが、その辺はご自分で判断して読み飛ばしてほしい。

今回は鮮度の良いニシンの真子入り3尾、白子入り2尾を1尾300円で購入した。ニシンの身の部分はもちろんだが、それだけでなく真子も白子も料理し、そのすべてを味わってみることにした。特に今回のポイントは刺身と鮨である。実は正直なところ、生ニシンの刺身と鮨は筆者自身が食べたことはなく、今回初めての経験なのだ。お初で手探りの作業だったことを以下に説明していこう。

先ずは、真子と白子の料理である。真子は筆者が大好きなカズノコの原料となるニシンの卵巣であり、カズノコになった加工品は食べたことはあるものの生の真子を料理して食べるのは初経験である。また白子そのものは、先の1月と2月に2ヶ月続けてトラフグの白子を鍋料理で食べたばかりであり、トラフグとニシンの白子の味はどう違うのかを確認してみたいという思いもあった。

ニシンの真子と白子の料理
ニシン ニシン
ニシンの雌 ニシンの雄
ニシン ニシン
1,大きく発達した真子が出てきた。 1,白子も同じように大きく成長していた。
ニシン
2,どれもが食べ頃だと感じられる成熟ぶりである。
ニシン ニシン
3,1尾分の骨切りした三枚おろしと真子を準備する。 3,2尾分の白子の大きな血管を爪楊枝で刺し、血を抜き出す。小さな血管はそのまま触らない。
ニシン ニシン
4,火にかけた煮汁に三枚おろしの身と真子を入れ、針生姜を上から散らす。 4,薄い塩水を沸騰させ、その中に白子を入れて、しっかりボイルする。
ニシン ニシン
5,煮汁をお玉で上からかけながら煮る。 5,10分ほどボイルしたら、氷水の中に入れ、十分に冷やしこむ。
ニシン ニシン
6,三枚おろしの片身と真子の半分を一人分として皿に盛りつけ、ニシンの真子入り煮魚が完成。 6,白子を適度な大きさに切り、ポン酢醤油、紅葉おろし、刻みネギをかけ、ニシンの白子ポン酢和えが完成。

 

この二つの料理とも初めて食べたので、その感想を記すと、煮魚の方は「非常に旨い」と感じ、ニシンという魚は実に美味しい魚であることが実感できた。そして真子の方は「ア〜・・・、これはカズノコだ」と思った。真子の煮付けはお箸で好みの大きさに分離するのに苦労するくらい堅く、これは単なる煮魚をする時の方法の問題ではなく、やはりニシンの真子が持つ粘着力の強さが火を通しても出てくるのだと思われた。

次に白子ポン酢和えは、意外にサッパリであまり旨みは感じられず、あのトラフグ白子のとろりと溶けるような旨みにはとても敵わないと思った。反省点としては、塩水で10分ほどはボイルしたので、時間をかけすぎたのかもしれない。これはトラフグのように2kgを超えた大きさになると白子も400gはあるので、あらかじめ10分以上しっかりとボイルしておかないと、鍋に入れた時に中心部に火が通っていないという失敗をしかねないので、その同じような感覚でニシンの白子もボイルしてしまったのが味を損ねたのかもしれない。だが実際にどうすればもっと美味しくできたのか、正しいやり方は初めてのことでよく分からないことを告白しておきたい。


ニシンの刺身と鮨

さて、今月号で一番の目的はニシンを生で食べてみることだった。北海道の人にとっては当たり前のことなのかもしれないが、福岡に住む筆者はまだニシンの刺身や鮨を食べたことがなく、令和2年2月号No.194での内容不足分を補う意味でも、このことは楽しみにしていたのだ。

先ず、結論を先に記しておこう。ニシンは生でも最高に美味しい魚である。

サンマやマイワシの美味しさを彷彿とさせるがそれとも違う。このニシン目の仲間には、カタクチイワシ、ウルメイワシ、キビナゴなどがいて、小骨が多いという点では、ヒラやコノシロも分類学上は近い存在であるけれど、そのような仲間のなかでも際だって美味しい魚だと思った。

ただ、とても美味しい魚なのだが一つ厄介なことがある。それは小さな小骨、正確には「上神経骨」の存在である。前号のFISH FOOD TIMES 3月号でマエソという小骨の多い魚を採りあげ、またもや連続して4月号でも小骨が多いニシンなのだから、読者の皆さんは「どうなっているの・・・?」というところだろう。これは深い意味はなく、たまたまこうなっただけのことなのだが、今回は小骨続きなので小骨のことを少し説明しておきたいと思う。

小骨とは下の図の上神経骨のことである。皆さんお馴染みの生サーモンを刺身や鮨にする時に骨抜きで引き抜かなければならない厄介なピンボーンのことである。今時生サーモンもトリムEに加工したのを仕入れている店の人は面倒な骨抜きの苦労をしていないかもしれないが、魚類の中では少数ながらもこの上神経骨という骨を持っている魚がいて、ニシンもその内の一つである。

ニシンの小骨は家庭内で食するのであれば、それほど神経質になる必要もないと思うレベルである。だが、水産小売関係者がニシンを刺身や鮨の商品で販売するとなると、やはり骨切りという作業は避けて通れないと思われる。先月号に引き続き、骨切りを含めた刺身と鮨への作業工程を以下に記すとしよう。

生ニシンの刺身と鮨作業工程
ニシン ニシン
1,三枚おろしの身の血合い骨全体に、柳刃の刃先でV字の切り込みを入れる。 6,2尾分のすべてを皮引きする。
ニシン ニシン
2,反対側にもV字に切り込みを入れる。血合い骨はあまり長くないので、あまり深く切り入れなくてもよい。 7,腹骨の向きと直角に交差する形で、皮下の脂肪層を残すように骨切りを進めていく。
ニシン ニシン
3,上身の血合い骨をV字の切り込みによって分離した状態。 8,骨切りを終了し、骨切りをした後の切り口を見せた上身の状態。
ニシン ニシン
4,アジと同じように柳刃の峰を使って、頭部側から尾側へと皮引する。 9,骨切りは皮下の脂肪面を切らず、その寸前で刃を止める。皮下の表面には刃先が際まできて、その痕跡が僅かに見える。
ニシン ニシン
5,皮引きの最後は柳刃の腹でニシンの皮下脂肪面を押さえ、皮を左手で引っ張って除去する。 10、骨切りを進める目的を含め、薄造りにして刺身と鮨にする。あまり薄いと形が崩れるので比較的厚めの薄造りにする。
ニシン
片身を7〜8切れに切った1尾分のニシン薄造り刺身
ニシン
そぎ造り技法で小刃を立てた鮨ダネのニシンにぎり鮨1尾分

 

これら二つの商品は、単純な魚だけの原料原価はそれぞれ300円である。刺身の1切れ、鮨の1カンは約20円ほどになる計算である。容器のコストやあしらいを使う量などで総原価は変化するが、まあこのボリュームで300円プラスアルファの原価(鮨はシャリのコストも加わる)であれば、売り手も買い手もウィンウィンの売価が実現できるのではないかと考える。

しかも、何と言っても生ニシンそのものが最高に美味しいのだから、これは小売関係者にとって非常に面白い商材であることは間違いない。


ニシン資源回復の事実を大事に活かしたい

今期の北海道日本海側のニシン漁獲高はこのままいけば6,000トンを超えるだろうと見られているが、4月の漁期終了を迎えるまで結果は分からない。しかし、これまでニシンは順調な水揚げが続いているようであり、これから日本においてニシンの存在感や位置づけはだいぶ様変わりしていきそうな勢いである。

残念ながらタイミングとして、FISH FOOD TIMES の今月号が更新されるのは4月1日なので、今期のニシン漁はピークを過ぎているはずであり、生ニシンを刺身や鮨に商品化して水産部門の売上増進に結びつけていくには遅すぎると言わざるを得ない。だが、ニシンの資源回復傾向は今後も毎年安定的に継続していくはずであり、ここまで記してきた情報を1年後の2月3月の販売計画に活かしていくことは出来るのだ。

このところのニシン資源回復状況というのは、これまで北海道の漁業関係者の方々の継続的な努力が結びついた結果であり、単なる偶然の事ではないことを読者の皆さん方は頭に入れておいてほしいものである。具体的には、ニシン資源を増やす目的で1996年から12年にわたって北海道の主導で「日本海ニシン資源増大プロジェクト」が実施された。このプロジェクトの目玉となったのが人工授精で育てた稚魚を放流する事業であり、この親魚として石狩湾系ニシンが使われたとのことだ。 2007年のプロジェクト終了以降もこの地域では現地の漁業協同組合が中心となって、稚魚放流や、漁業者がニシンを獲るための漁網の目を粗くして小さな魚を獲らないようにする自主規制など、資源復活のための地道な努力を続けてきたとのことである。

そのような努力の結果、1999年3月18日に留萌市沿岸で45年ぶりに「群来(くき)」が確認され、それ以降は暫く群来が見えず、それから10年ぶりの2009年に確認され、それ以降は毎年発生するようになっている。

日本では明治末から大正時代がニシン漁の最盛期で、毎年10万トン以上が普通だったとのことであり、時には100万トン近くも獲れていたのが、1957年にニシンがまったく獲れなくなった。これは何の規制もなく、ニシン御殿が次々と建つような、謂わば乱獲が原因だったようである。いっぽう北欧を中心としたヨーロッパでは、大西洋ニシンが毎年200万トンもの量が継続的に漁獲されている事実があり、TAC(漁獲可能量)などの漁獲規制によって永続的にニシンなどの資源が枯渇しないようにしているからのようである。

幻の魚と言われたニシンが多くの人たちの努力によって資源回復しようとしているが、魚小売関係者もこの美味しい魚をどのように位置づけ、そして十二分に活かしていけるか、その価値をしっかりアピールしながら販売していってほしいものである。


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                 更新日時 令和 6年 4月 1日