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令和 3年 6月号  210

タチウオ

でかいタチウオ


15年前の意地悪な投げかけへの反省

弊紙がまだボリュームナンバーも付けていない2006年5月号でタチウオをテーマとして採り上げていた。その当時、このホームページで記していたコンテンツについて、筆者の本音の部分として「あれもこれも多くのノウハウを公開するなんてことは基本的にしたくない」というのがあった。その核心的なポイントは敢えて記述せず、あわよくば革新的部分を知りたいというニーズをきっかけに新規顧客の開拓に結びつけることが出来れば・・・、という計算が働いていたと記憶している。

ところが、その後15年間で180回を積み重ね、今月で210号ともなってくると、もう既にそんなケチ臭いことを計算するような気持ちは全く消え失せていて、今や筆者の頭の中は毎月更新するコンテンツを如何に充実したものに仕上げるかということへ明らかな変化をしているのである。

そうなると、FISH FOOD TIMES を立ち上げて5年目くらいまで記していたバックナンバーのコンテンツを見直した時、ここ最近のものと比較すると手抜きとまでは言いたくないものの、あまりにも説明不足というか、もっと記すことはあったはずなのに・・・、との反省が心に湧き起こるのである。特に2006年5月号のタチウオについては、読者に意地悪な投げかけをしたまま15年間放置していたことを何とかしたいものだと、心の隅に引っ掛かかるものがあった。

そこで今月号では、まずはこのことで筆者の気持ちをスッキリさせるため、この懸案事項を記すことからスタートすることにしたい。

15年前のあの時、以下の「タチウオ拍子木造り」はどうやって作成したのか分かりますかと投げかけ、そして下のテーブル内にある言葉を記して突き放していたのである。

タチウオ

「フィッシュフードタイムス」は、これ以上ポイントとなる部分を敢えて表現しない。饒舌に何もかもお喋りしてしまうことを「潔しとしない」からだ。意地悪なようだが、意外と簡単だから後は自分でお調べあれ。

 

このことを知っている人は以下を読み飛ばしてもらって結構なのだが、そうでない人は以下を参考にしてほしい。

タチウオ拍子木造りの作業工程
タチウオ
1,タチウオは身が厚いほど美味しくて価値があり、尾の部分の細くて薄い部位は価値が低い。そこで、この尾の部分を主に使用して刺身の拍子木造りにする。
タチウオ
2,長いヒレの下の付け根にある筋肉はマグロの分かれ身に相当する部位だが、これも刺身の材料として活用する。もちろん、骨が残っていてはいけない。
タチウオ
3,皮を除去するが、タチウオの皮は薄くて切れやすいので、上手に仕上げるのは簡単ではない。身の部分は棒状四角形の4層に分かれていて、指で簡単に分解できる。分かれ身の部分を含めると、細い身が合計5本となる。
タチウオ
4,バラバラにした棒状の四角形の身を寄せ集め、1寸(約3p)ほどの長さに切り揃える。
タチウオ
5,寸切りした身を5〜6本集めて、半分に切った大葉で丸め、盛りつけて拍子木造りが完成。

 

拍子木とは夜の見回りなどで「戸締り用心、火の用心」というかけ声と共に鳴らしたり、大相撲の呼び出しが鳴らすことでも知られている拍子を取るために使う木の道具であり、棒状四角形の形がそれに似ているとして、この刺身は拍子木造りと名づけられたようだ。

さあ、これで15年間抱え続けてきた一種の悔いのような心残りも解消できた。ここからは当時タチウオについての知識を有しながらも表現しようとしていなかった部分なども含め、新たな気持ちでタチウオのことを以下に記していくとしよう。


タチウオの漁獲量減少

FISH FOOD TIMES で前回採り上げた2006年当時、タチウオは全国で16,099dの漁獲量があったと記録が残っているが、直近2019年のデータでは6,374dとなり、約1万d近くも減少し半分以下となっている。さらに過去に遡ると、それどころではなく漁獲最盛期の1967年に68,307dあった頃と比較すると、タチウオの漁獲量は何と約10分の1以下になっているのである。

  

日本の産地別データでは、愛媛、和歌山、大分という瀬戸内海に接する県、そして長崎、鹿児島を含む5県がタチウオの主たる産地となっている。

海外でのタチウオ漁獲量は、2019年に、中国 920,000d、インド 220,000d、インドネシア 60,000d、韓国30,000d、ほどが漁獲されており、特に韓国は「カルチ」と呼ばれ、国民的に根強い人気を誇る高級魚として位置づけられている。

下の画像は、筆者が2015年に韓国釜山を旅した時に撮ったものである。

 

韓国釜山チャガルチ魚市場でのタチウオ販売光景

 

チャガルチ魚市場2階食堂のタチウオ唐揚げ

 

日本でタチウオ漁獲量が昔の10分の1になってしまった資源枯渇要因の一つは、タチウオを韓国に輸出すれば1〜2歳魚の小型魚であっても日本よりも高く売れるということで、全国で産卵親魚などのサイズも含めてタチウオを獲り尽くすような乱獲がおこなわれていたからだと言われている。

そして、その韓国は何故日本からタチウオを輸入しなければならなくなったのか、その原因は黄海、東シナ海などタチウオの好漁場で中国が年間100万d前後もの大量漁獲続けたことで、韓国の水揚げそのものが減少し、自国の消費する分を賄えなくなったことがその遠因となっているようである。


でかいタチウオ

しかし近年のこういう状況にも拘わらず、今年の場合は行く先々で筆者の皮膚感覚からすると、タチウオの大きいサイズがやたら多くて安いなと感じていた。このため今年は高級で高額な「でかいタチウオ」を扱うチャンスだと思うところがあったのだ。

その直感的なことを裏付けるような事実が以下のグラフに示されている。

 

今年は豊洲市場にタチウオが数多く入荷した分、価格もそれなりにこなれたものになったはずだが、その相場を平均価格で判断するととんでもない間違いを犯すことになる。なぜなら「でかいタチウオ」はその大きさがでかいほど高級で高額であり、このような業界用語でいわゆる「キロもの」と称されるタチウオは小さくて細い痩せたタチウオとはまったく別格の扱いになるからである。

今年はよく目にする「でかいタチウオ」は、それが標準和名タチウオ、学名Trichiurus japonicus なのか、それともテンジクタチなのか、オキナワオオタチ、なのか見極められるだろうか。日本ではこの3種が日本近海のタチウオ科タチウオ属として認められているけれど、オキナワオオタチはTrichiurus sp.1、テンジクタチはTrichiurus sp. 2 として扱われていて、実はまだ正式な学名がないのである。

テンジクタチやオキナワオオタチは2〜3kgはおろか、5kg以上になるのは珍しくないということだが、実は筆者もこれらを並べて比較できるような経験はなく、沖縄の知念市場で「沖縄のタチウオは目が大きくて、やたらでかいな・・・」との感想を持ったことはあるけれど、これをタチウオとは別種のオキナワオオタチとして詳細に観察したことはなかった。

また、これは当たり前のことだが、これらが切身や刺身になってしまうとその区別は出来るはずもなく、あなたが食べたでかいタチウオはまだ学名がないどちらかだったかも・・。


でかいタチウオの商品化

さて、巻頭に掲示した3枚の画像はすべて今年4月に作成したものであり、タチウオ入り刺身盛り合わせは4月にある指導先企業で商品提案した「旬鮮刺身盛り合わせ」であり、にぎり鮨と塩焼きは安く手に入れることができた「でかいタチウオ」で作ったものである。

「でかいタチウオ」は通称「キロもの」と呼ばれるタチウオのなかでも別格の存在であり、やはりその醍醐味は細ものタチウオでは味わえない焼き魚料理であろう。以下にタチウオを塩焼きにするための切身作業工程を記してみよう。

タチウオ切身の作業工程(腹部を切り開かない内臓除去方法)
タチウオ タチウオ
1,これがでかいタチウオ。幅1,200oのまな板にやっと収まるほど長過ぎる大きさなのて計量できなかったが、たぶん1.5kg前後。 6,このポイントは内臓を頭部に付けたまま腹部から除去することにある。内臓が腹部に残らないよう気をつけることが重要。
タチウオ タチウオ
2,最初に長い背ビレを切り落とす。 7,腹部を切り開かず、簡単にに内臓を除去することができた。
タチウオ タチウオ
3,出刃包丁の刃元を使って、タチウオの首付近に切り込みを入れ、背骨を切り離す。ただし、背中側の上半分だけに留め、腹側の下半分には切り込みを入れない。 8,でかいタチウオなので、多少幅を狭くして切っても充分に食べ応えのある大きさとなる。包丁は必ず刃先を斜めに傾け、少しでも身厚に見せるようにしなければならない。
タチウオ タチウオ
4,腹側に出刃包丁の切っ先部分で切り込みを入れる。しかし胸ビレの近く1〜2pだけは、意識的に切らず、残したままにする。 9,頭部側から5個の切身を作成したが、それ以降の尾部は切身にせず、刺身や鮨の材料にする。
タチウオ タチウオ
5,出刃包丁の刃元をタチウオの頭部に置いて強く押さえつけ、左手で胴体を引っ張り、頭部と胴体部を分離する。 でかいタチウオの切身

 

タチウオの腹を切り開いていない切身は焼いても形が良い、だから腹に切り口を入れないのが基本である。もし頭部を落とした筒切りを菜箸で内臓を掻き出そうとすると、この時期に重要な魚卵を傷つけてしまう恐れがあり、上記した方法が楽で簡単なのでお勧めなのである。

タチウオ

 

次は切身をつくった後に残る尾部の活用である。尾部は身が薄く可食部が少ないので、上記画像のような塩焼きにしても美味しく食べるのは難しい。そこで、細くて薄い部位でも美味しく食べられるように、尾部は刺身や鮨にするのがベターであり、それも焼き霜(炙り)にすると風味が増す。

タチウオ炙りにぎり鮨の作業工程
1,柳刃包丁を使い、大名おろしの方法で中骨の上を滑らせるように、尾ビレの端に向けて切り開いていく。 5,タチウオの尾部を、皮を上に向けてネットの上に置く。
2,タチウオの尾部を二枚おろしにした状態。 6,強い火力で素早く炙りにしなければ、身が薄いタチウオの身にみずみずしさが残らない。
3,中骨を下にして、柳刃包丁を使い、尾ビレの端に向け、滑らせるように切り開く。 7,タチウオは皮が剥げやすく、炙りの表面も活かしたいので、そぎ造りではなく、あえて皮の表面から薄造りにする。
タチウオ
4,タチウオの尾部を三枚おろしにした状態。 タチウオ炙りにぎり鮨が完成

タチウオの儲けは尾部の活用方法次第

でかいタチウオでない場合はどうするかと言えば、基本的に取り扱い方法は大きく変わらず、大きいか小さいかの違いだけである。例えば、以下の画像のような「キロもの」ではないものの、それなりの大きさの釣りもので、銀色のグアニン層がしっかり残っている刺身用タチウオはどのようにするか。

釣りタチウオの商品化
タチウオ
1 釣りタチウオの商品化イメージ 頭部側切身、尾部側は三枚おろし
タチウオ
2 釣りタチウオの商品化イメージ 頭部側切身、尾部側は刺身又は鮨へ
タチウオ タチウオ
釣りタチウオ切身3切れ 釣りタチウオ刺身用の冊
タチウオ タチウオ
釣りタチウオ切身2切れ  銀皮が剥げたら身を見せてフライ用

 

タチウオ切身の販売に際して気をつけなければならないのは、タチウオ頭部側は背の身が薄く、腹の身は丸くて厚いという見た目の特徴があり、切身をトレーに盛りつける時は必ず腹を目立たせるように上にして、背側を下にするように配慮した方が良い。こういうほんのチョットした細かいことが売れ行きに影響する。

さらに頭部側の身厚で太い部位と尾部側の薄くて細い部位を同じ容器に入れ込んで売るようなことをしないことである。部位によって使い勝手が大きく違うタチウオの切身を同梱したら、お客様の料理イメージを悩ませる原因をつくることになるからである。

タチウオは頭部側と比べると価値の低い尾部側をいかに無駄なく活用出来るかによって利益が大きく左右されることになる。薄くて細い尾部をいかに扱うか、タチウオの儲けはそこにあると言って過言ではない。


脂肪タップリの旨い魚タチウオ

さて、今月号もそろそろ締めに入りたいと思う。タチウオは銀色の細長い魚体なので「淡泊な味の魚」だと思っている人もいるのではないか思うが、それはとんでもない間違った認識である。

タチウオには多価不飽和脂肪酸のDHAが100g中に1,400mg、EPAも970mg/100g 含まれていて、何とその脂質の量は20.9mg/100g あり、タンパク質の16.5mg/100gよりも多い、という珍しい構造を持った脂肪タップリの魚なのである。

つまり、こういう脂肪構造を持った身質の魚は「旨い魚」ということだ。こんなに脂肪が多いことを感じさせない柔らかい身質は、焼く・煮る・揚げるなど、どんな料理にも応用が出来て、プロの料理人に好まれる魚の一つということである。

以前は高値で取引されてきた「でかいタチウオ」も今年は水揚げ量が増えて価格もこなれて来ているのは間違いなく、6月からの何ヶ月間は年間でも特に入荷が増える季節でもあり、価値のある「でかいタチウオ」を扱うには好機が到来したと考えるべきであろう。今月号のコンテンツを参考にして、タチウオの拡販が勢いを増すことになれば幸いである。


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更新日時 令和 3年 6月 1日