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鮮魚コンサルタントが毎月更新する魚の知識と技術のホームページ
令和 3年 1月号 205
鮭を二日に一切れ
コロナ禍
2020年は世界中がコロナ禍で大混乱となってしまったが、今年はどうなるのであろうか・・・。12月から一部の国でワクチン接種が始まったことで、パンデミックは少しずつ終息に向かっていくであろうことを願いたいものだが、この先の世界の状況を予測するのはなかなか困難だ。12月29日現在、世界中で8,000万人以上が新型コロナウイルスに感染し、日本でも感染者は20万人を超えたけれど、以下のグラフにあるように日本はまだ欧米と比較すると今のところ軽傷と言えるだろう。
ところが、日本でも11月以降は第3波の勢いが止まらず、今後どうなるか予断を許さない状況となっているのはご存じの通りだが、ここでそのことに詳しく言及する必要はないと思われる。それよりも、自分がその感染者の一人にならないことが大事であり、そのためにはどうすれば良いのか、 FISH FOOD TIMES としても魚を取り扱う立場として「魚を食べることによる免疫力アップ」について今月号では触れてみたい。
免疫力
マスク着用、手洗い消毒、身体的距離確保(三密を避ける)という行動パターンが日本の日常光景になったけれど、これは物理的、空間的な遮断によってウイルスの侵入を退ける方法であり、人としてウイルスに負けない強い免疫力を備える目的には効果がなく、そのなかにはかえって逆効果となる側面も考えられる。
その一つは、手洗い消毒である。読者からの誤解を招かないため記しておくが、筆者も今は日本人の義務として日常生活の中で、行く先々でエチケットとして手洗い消毒をおこない、マスクもしているので、決して世の中の動きに逆らっているということではない。しかし世界中が新型コロナウイルスに悩まされている非常事態の現時点においてはそれで良いとしても、これから先に訪れるであろう「アフターコロナの通常時」に至ってもそのようなことを求められるとしたら、これは人間の免疫力という観点からは疑問を挟まざるを得ないと考える。
人間の免疫力について、昨年のFISH FOOD TIMES No.197 令和2年5月号でも、少しだけ触れていたが、その時に藤田紘一郎東京医科歯科大学名誉教授が記された「人の命は腸が9割」や「腸をダメにする習慣、鍛える習慣」という本に記された内容を筆者なりの方法で要約して以下のように紹介していた。
免疫力とはどういうものかを再認識してもらうために、敢えて同じ内容を以下に貼り付けることにする。
腸は「消化・免疫・解毒」の3大機能を担っている 。腸は人体における最大の免疫器官であり、食べたものが吸収されるのは小腸からであり、病原菌が体内に入っても小腸から吸収されなければ病気を防げることから、小腸は人体最大の要塞と呼ばれている免疫システムである。 免疫システムを支えているのが2万種類1,000兆個の腸に棲む共生菌と呼ばれる腸内細菌であり、腸は免疫機能の7割を担っているが、免疫の働きを区別すると感染防衛・健康維持・老化予防に分けられる。風邪やインフルエンザにかかってしまうかどうかは免疫力の強さにより、腸が健全に働いていればウイルスの感染を予防できるし、機能が弱っていれば風邪をひく。 日本人が日々セッセと取り組んでいる殺菌行為は、腸に共生している腸内細菌も傷めつけ、免疫力を自ら弱めている行為である。かつては免疫力の弱い子供の病気と言われた、はしか、ノロウイルス、ロタウイルスを発症する大人が増えているが、これは殺菌剤や抗菌剤の乱用にある。免疫力は身近な病原体と戦うごとに鍛えられ強化される。細菌を排除するばかりでは、免疫機能は鍛えられる機会を失い弱体化するだけである。 大腸菌は腸に棲む共生菌であり、人間の生命にとって不可欠な存在である。病原菌が体内に入ってくると退治するために働く番兵のようなもので、腸が消化出来ない食物繊維を分解して自らのエサにすると同時にビタミン類を合成する働きもある。人間は生後1年間に多種多様な細菌を腸に取り込み、腸内細菌叢をいかに豊かに育んだかによって、生涯の健康状態の核が決定づけられる。赤ちゃんはハイハイをして、床についた菌タップリの手を舐めることで免疫力を育てることが出来る。 皮膚には皮膚の脂肪をエサとする多様な常在菌が棲んでいて、常在菌が脂肪を食べると脂肪酸の膜が作られて、皮膚に弱酸性のバリアが出来て病原菌がつくのを防ぐ。しかし、石けんで手洗いをすると皮膚常在菌の約9割がいなくなるし、薬用のうがい薬も喉の健康を守っている菌を激減させる。 皮膚の角質層は皮膚の最上層にあって、外敵の侵入を防ぐ働きをを持つ皮膚の最も硬い部分である。この角質層の細胞は皮脂膜がなくなるとバラバラになってしまい、病原菌やアレルギー物質が侵入しやすくなる。皮膚の隙間から異物が入ってくると免疫システムが反応し、かゆみや湿疹などの炎症を起こす。細菌を遠ざけようと日頃から薬剤を使っていると、免疫機能は怠け、免疫力は低下する。 |
その197号で、カツオはタンパク質が豊富なだけでなく、良く知られたDHAやEPAの他、ビタミンD、B6、B12、ナイアシンなどが豊富であることから、人が免疫力をつけるにはカツオのように栄養豊富な魚を主食にして、藤田教授お勧めの味噌汁や納豆、食物繊維豊富な野菜などを副菜として一緒にバランス良く食べることが大切だと記していた。
しかし、魚の免疫力に関して、それ以上深く言及してはいなかったので、今月号ではもう少し詳しく魚の栄養と免疫力について記してみたい。
免疫力を高めるビタミンD
人間はキラーT細胞を大量に増やすことによりウイルスを撃退することが出来る、この力のことを免疫力という。人間の身体は水分が60%〜70%、約20%がタンパク質でできていて、免疫力を高める食べ物には細胞の新陳代謝を促すためのタンパク質が必要となる。そのタンパク質には動物性タンパク質と植物性タンパク質があり、動物性タンパク質の方が植物性タンパク質よりも必須アミノ酸はバランス良く含まれている。必須アミノ酸とはタンパク質を構成するアミノ酸のうち、その動物の体内で充分な量を合成できず栄養分として摂取しなければならないアミノ酸のことであり、必須アミノ酸の量がバランス良く多く含まれている動物性タンパク質を摂取することは、免疫力を高めることに効果的である。
人の免疫力を高める方法としては、適度な運動、充分な睡眠時間、バランスの良い食事などが挙げられる。そして今の日本では、新型コロナウイルスから身を守るために、手洗い消毒、マスク着用、三密を避けるなどがおこなわれているけれど、これらの行動の他に日常生活の中でどういうことが出来るかを考えてみると「免疫力を高める栄養を摂取する」ことでウイルスに侵されない丈夫な身体をつくることも重要である。
免疫力を高める栄養としては、マグネシウム、亜鉛、ビタミンD、の三つが代表的な栄養素である。
まずマグネシウムは、不足すると心臓不調の原因となりやすい。マグネシウムは血糖値の上昇を抑える働きがあり、血中のマグネシウム濃度が低い人は心筋梗塞や狭心症になりやすく、長くマグネシウム不足状態が続くと糖尿病にもかかりやすくなるということだ。
マグネシウムを多く含む食品は、ほうれん草、ブロッコリー、ゴーヤなどの緑色の濃い野菜が豊富であり、ひじき、海苔、昆布、ワカメなどの海藻類にも多く、これらは腸内細菌のエサにもなるので、腸内細菌を活発化させる意味でも都合が良い。
次に、亜鉛は数百種類の酵素の中心的役割を担っていて、タンパク質、乳酸、アルコールの代謝など、様々な酵素に関与して代謝をおこなっているが、中でも身体を酸化から守るサビ止めの働きや有害金属を体外へ排泄することが亜鉛の重要な働きである。亜鉛を多く摂って亜鉛血中濃度が上昇すると、免疫力を高めるリンパ球の一種である「キラーT細胞」が増加する。
亜鉛を多く含む食品は、まず別格の存在としてカキがある。そしてレバーやチーズなどに多いが、その他の肉類、魚介類、野菜類など多くの食品に少しずつ幅広く存在している必須微量元素の一つである。
さて、最後の三つ目が今月号の主役として取り上げるビタミンDである。
ビタミンDの基本的な働きは腸からカルシウムの吸収を助けることである。ビタミンDは脂溶性(脂に溶ける性質を持つ)ビタミンで、腸管からのカルシウムの吸収を促して丈夫な骨を維持するだけでなく、筋肉のタンパク質合成を促進する働きもある。
ビタミンDは全身で働く非常に重要な成分であるが、皮膚の組織にはビタミンDの元になるプロビタミンD(7−デヒドロコレステロール)という物質が多量にあり、人は紫外線(UV)を皮膚に浴びることで、体内のプロビタミンDからビタミンDを合成する。皮膚の中でできたビタミンDはタンパク質(ビタミンD結合タンパク質)によって肝臓に運ばれ、肝臓で加工され活性型ビタミンDになっていく。
これまでの日本では、欠乏しないことが大切とされてきたビタミンDだが、実は軽度の不足であっても骨以外にさまざまな疾患リスクを高めることがわかってきているらしい。現在の日本では、ビタミンDの源となる魚の摂取量が減っているだけでなく、女性は日焼けを防ぐためにUVケアをする習慣が浸透したことでビタミンD不足の現象がでてきているようである。
ビタミンDには免疫賦活作用や抗ウイルス作用、抗炎症作用もあり、不足すると急性ウイルス性呼吸器感染症や肺炎のリスクが高まり、ウイルスによる罹患率や死亡率、重症度との関係も大きいとの報告がある。また、ビタミンDを受け取る受容体がT細胞やB細胞など多くの免疫細胞に存在することから、免疫機能の維持にはビタミンDの充足が重要だと考えられ、自然免疫を担うマクロファージに抗菌物質をつくらせたり、ウイルス感染で起こる肺の炎症や損傷を防ぐなど、多様な免疫関連機能が確認されている。
しかしこのFISH FOOD TIMESでは、ビタミンDの新型コロナウイルスとの関係を含め、これ以上の専門的で医学的な部分には門外漢であるが故に立ち入らないことにする。
ビタミンDの摂取
ビタミンDはD2からD7までの6種類あり、人間にとって重要なのは植物由来のD2と動物由来のD3である。シイタケなどに含まれているD2は魚に多く含まれているD3ほどの量がなく、D2よりもD3の方が生理活性が高い活性型ビタミンなのである。
人はビタミンDを1日当たりにどれだけ摂取すれば良いのか。厚生労働省は2020年版の「日本人の食事摂取基準」において、18歳以上のビタミンDの1日あたり摂取目安量を、それまでの5.5µgから8.5µgに引き上げた。
一方、米国とカナダでは、食事摂取基準で定めるビタミンD推奨量が「70歳以下は1日あたり15µg、71歳以上は20µg」となっており、日本の摂取目安量とはかなりの開きがある。これは、米国やカナダでは日照による皮膚でビタミンDを産み出すことを考慮していないことも関係しているらしい。
以下の表は、西埼玉中央病院のホームページに掲載されている魚のビタミンDの含有量である。単位のµgはマイクログラムのことであり、100万分の1gに相当する。マイクロはIUという単位でも表示され、1µgは400IUであり、また血中のビタミンD濃度はng(ナノグラム)単位の表示となり、ng/mlとなる。
上の表に記されているように、ほとんどの魚にビタミンDが含まれいて、100gの魚の切身を食べれば1日に必要なビタミンDの半分以上を摂取できることになる。但し、エビ・カニ・イカ・タコ・貝類にはビタミンDは含まれていない。また、牛肉、豚肉、鶏肉、及びこれらの内臓類、そして牛乳、乳製品。更には野菜、芋類、豆類、果物、海藻類などにもビタミンDはほとんど存在しない。
さて、この表の中で1位のアンコウの肝を毎日のように食べている人は皆無だと考えられ一般的な食材ではない。また2位のマイワシは、1尾85gもの大きさの丸干しを食べることも日常的にあまり多いとは思えない。そして3位に位置しているのは鮭である、鮭は日本人にはとても一般的であり、美味しく人気のある魚だ。ビタミンDの含有量は100g当たり35µgもあり、含有量が多いだけでなく高タンパク低脂質の魚でもある。
この表に例示されている100gの大きさの鮭切身というのは、どちらかと言えば厚切りの部類であり、やはり日々の生活の中で朝食や昼食の時に鮭を食べるとすると70g前後が一般的な大きさであろう。70gの鮭切身を食べると、ビタミンDを摂取できるのは約24.5µgという計算になる。厚生労働省発表の「日本人の食事摂取基準」では、18歳以上のビタミンDの1日あたり摂取目安量は8.5µgとなっているから、普通に生活している人は「鮭を2日に1切れ食べる」ようにすれば12.25gであり、ビタミンDの不足状態は避けられるということになる。しかし、もし2日に1切れを続けるのが難しいと感じるならば、せめて週に2回食べるようにすれば、計算上は1日当たり約7µgとなるから、推奨の摂取目安量は8.5µgには届かないけれど、少なくとも2020年に改正される前のビタミンD1日あたり摂取目安量5.5µg以上にはなるのだ。
つまり、これまで記してきたことから筆者が伝えたいことは、人の免疫力を高める方法としてビタミンDは有益であり、その具体的な方法として魚を食べることはとても有効で、特に鮭はビタミンDの含有量だけでなく、その美味しさや人気という面でも効果的なので、出来れば「鮭を2日に一切れは食べる」ようにしようということである。
ビタミンDと健康
「鮭を2日に一切れは食べる」ようにしようと記したが、実は筆者は実際の家庭生活において既に何年もの間ほぼこれに近い食生活をしていて、朝食に鮭の塩焼きが2日に1回ほど出てくるのが我が家の朝食パターンなのである。
もちろん、我が家の朝食だから上画像の銀サケ塩焼きのように、ハジカミ、カボス、大根おろし、熊笹、などは付いてなくて、普通の皿にポンと載せられているだけなのだが、朝食の直前にグリルで焼いた焼きたてホヤホヤを食べている。鮭の種類は家内の気分と懐事情次第で変わっているようで、紅鮭、銀鮭、秋鮭など色々な種類をランダムに味わっている。
筆者は朝食を抜くことはよほどの特別な事情がない限り有り得ず、もし7時台の飛行機に乗ることがある時は朝の5時半頃に朝食を摂っているのだが、家内は4時半前後に起きて鮭の塩焼きや味噌汁など、いつもと変わらない朝食を準備し、それから空港まで車で送ってくれる。
このような食生活を長く続けているからなのか、筆者は風邪で病院の世話になるということは年に一度もなく、直近で風邪のために内科に行ったのは2〜3年前だと思うのだが、その記憶は鮮明でないほどである。つまり、筆者は図らずもビタミンD3を多く含む鮭を頻繁に食べていて、その結果として、年齢的には免疫力の高い身体になっているようであり、新型コロナウイルスにも罹患せず、健康を維持することにつながっているようである。こうした筆者の日常の食生活は、ビタミンD3の有効性に関して、身を以て感じさせる一つの例にもなるのではないか思う。
筆者は「医食同源」という言葉を真理だと信じている。2021年の丑年に6回目の年男となる筆者は、今年もこれまで通りに現役で仕事を続けていきたいと思っているが、それは今も鮮魚部門の作業場で3〜4時間ぶっ続けで包丁を持った立ち仕事が出来る体力を保っているので、自分としては「まだまだ大丈夫・・・」との自信を持っているからである。その自信の裏付けになっているのは、四十数年連れ添ってきた妻がずっと手作り料理を食べさせ続けてくれたからではないかと思っている。
妻の手作り料理というのは、まさに本物の手作り派というもので、家にはカップラーメン、チルド食品、フライ物冷凍食品など、普通の家庭にはたぶん必ず常備されているであろう便利な加工食品のストックが一切なく、これらが食卓に並ぶことは年に一度さえもない。一昔前に息子や娘二人がまだ幼い頃「誰々君ち家のように、たまには昼にカップラーメンを食べさせてほしい」と願っても、妻から撥ね付けられていたのである。
そのような手作り料理が当たり前の家庭環境なので、93歳の母を始めとして家族全員が内科系の病気には一切縁がない。もし筆者がこれまで添加物だらけの加工食品を長く食べ続けることを余儀なくされてきたとしたら、今のように健康な身体を維持していたかどうか疑問であり、何らかの癌に冒されていたりしたかもしれないし、立ち仕事が難しい体力しか残っていないほど衰えていたかもしれない。
ビタミンD3の摂取に適切な魚
少し横道にそれたので元に戻すことにしたいが、今月号でアピールしたいことは「魚を食べてビタミンD3を摂取し、免疫力のある丈夫な身体をつくろう」ということである。ビタミンD3が新型コロナウイルスに対して、どれだけの免疫力の効果を発揮するのかは不明だが、重症化したり、死亡したりすることがないよう、自己防御的な対策を打つことも大事だと考える。
その対策の一つとして「魚を食べること」が少しでも役立つ可能性があるとするならば、それを実行して無駄になることはないだろう。以下に、魚の中でもビタミンD3が比較的多く、しかも日頃の生活の中で無理のない魚料理を紹介しよう。
その一つ目は上記のランキング表で第2位に位置しているイワシ丸干しである。
このイワシ丸干しの大きさはせいぜい20gほどであり、2尾を合わせても40g程度なのでビタミンD3は18µg前後だと思われるので1尾あたり9µgとなる。厚生労働省が食事摂取基準で定めている日本人の一日当たりビタミンD推奨量の8.5µgとほぼ同じだから、1日に20gほどの大きさのイワシ丸干しを1尾食べたら必要量をクリアすることになる。
イワシ丸干しの主な原料となるマイワシは、このところ全国的に年々水揚げ量が増えており、以下のグラフのように北海道を例にとると、マイワシの水揚げ量増加に伴って取引価格も下がっていて、昨年は20万d台を超え今年は25万dに迫りそうな勢いで価格も低位で安定していることから、ビタミンD3摂取に好適な魚として売り込み商品には面白い存在となると考えられる。
同様の理由で、チリメンも面白い。
何故なら、チリメンの原料はイワシの稚魚だからである。イワシと一言で言っても種類としてはカタクチイワシやウルメイワシなどの稚魚もあるので、チリメンがマイワシとは限らないのだが、少なくともマイワシの稚魚に関しては増加していることは間違いなくその原料は豊富に存在している。
チリメンは上画像のようなキュウリとワカメの酢の物などで手軽に使える料理素材である。大きさはまったく違うけれどもイワシ丸干しとチリメンは親子だから同じ魚である。上の一覧表によると、スプーン一杯7gの量でビタミンD3の含有量は4.3µgとなっているので、イワシ丸干しと同じ20gの量にして換算すると3倍の約13µgと計算できる。チリメンのビタミンD3が13µgであれば、その含有量は同じ量のイワシ丸干しの9µgよりも多く、酢の物などの料理でチリメンを1日にスプーン2杯分食べたらビタミンD3の摂取は十分ということになるのだ。
最後に、これも鮭と並んで国民的な人気魚種の一つであるサバを取り上げよう。
上記の表で20位にランクされているサバは、1切れが100gでビタミンD3の含有量は11µgとなっている。例えば小型サバの半身サイズであれば100g以上の大きさが普通かもしれないが、塩サバの切身であれば80gほどではないかと考えられ、もし80gの塩サバが朝食に1切れ出たら、8.8µgのビタミンD3の摂取ができることになる。奇しくもこの数字は2020年度版から引き上げられた厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」にある18歳以上のビタミンDの1日あたり摂取目安量8.5µgにほぼピッタリとなるのだ。
つまり上画像のような焼いた塩サバ切身を、毎日朝食で1切れ食べるとビタミンDの摂取は充分だということになる。しかし、やはり同じサバが毎日続けばどんなに美味しくても食傷して継続できないのは間違いないので、塩鮭やイワシ丸干し、チリメンなどで変化をつけながら毎日魚を食べ続けることができれば、ビタミンDの1日当たり必要摂取量を満たすことが可能となるのである。
下の表にあるように、サバはビタミンDだけでなく、DHAやEPAといったオメガ3脂肪酸の含有量も、魚類の中ではトップランクにあり、このオメガ3脂肪酸も人間の免疫力を高めるには効果があるが、そのことには今回触れないでおこう。
免疫力を高めてコロナ禍を克服しよう
さて、そろそろ今月号も総括に入りたいと思う。例年1月号は通常月の画像を中心としたノウハウ版から少し離れ、敢えて小難しい内容であることを承知の上で、観念的な考え方などを中心に編集することにしているが、今月号の場合は昨年のコロナ禍の状況踏まえ、日頃注目されることがあまりない魚の栄養について言及することにした。
ここまで記してきた内容は基本的に様々な情報を寄せ集めた知識でしかない。筆者は医学専門家でも栄養学者でもないので、この記述内容がどこまで信用できるのか、この点は読者の判断にお任せしたいと思う。しかし、新型コロナウイルスによる世界中の大混乱の終息が見えない中で、我々は何とかして自己防衛を図っていかなければならないが、その方法の一つとして、魚が持つ栄養の一つであるビタミンD3が人間の免疫力を高めるために有効かもしれないとすれば、これを活用しない手はないと考える。
スーパーの小売り現場で汗水を流している水産関係者は、巣ごもり需要の売上拡大によって忙しい思いをされ、特別な販促をしなくても売上は順調なのかもしれない。しかし単に売上が上がれば良いというのでもないだろうと思われる。水産関係者の皆さん、是非とも魚の販売拡大によってお客様の健康を守るという使命感を携え、免疫力を高める可能性のある色々な魚をしっかりと売り込んでもらいたい・・・。
お客様から「新型コロナウイルスに罹らなかったのは魚を食べ続けたからかもしれない」との声が聞こえてくるように、まさに「エッセンシャルワーカーとしての使命」に燃えてほしいものである。
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水産コンサルタント樋口知康が月に一度更新している
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更新日時 令和 3年 1月 1日