「歯ごたえ」が食事の楽しさを決める?
噛むことの大切さについて
今回は「歯ごたえ」に関して少し深く見ていきましょう。
みなさんは、「歯ごたえのある食べ物」と聞いて何を思い浮かべますか?
スルメやおせんべいのような硬い食品を連想する方もいれば、うどん好きな方ならコシのある讃岐うどん、ラーメン好きなら“バリカタ”麺を思い浮かべるかもしれませんね。
実はこの「歯ごたえ」、私たちが食事を「美味しい」と感じる上で、とても大切な役割を果たしています。食材の味や香りと同じくらい、噛んだときの感触は食事の満足度を大きく左右するのです。
例えば、宇宙飛行士が食べる「宇宙食」をご存じでしょうか?
かつての宇宙食は、チューブ入りのペースト状のものが中心でした。しかし現在では、宇宙でも固形の食品が主流になりつつあります。これは単に技術的な進歩によるものだけではなく、長期間宇宙に滞在する中で、噛み応えのある食事の方が“満足感”につながるという理由もあるのです。
それでは、「歯ごたえ」とは一体どうやって感じているのでしょうか。
食べ物を口に入れて「噛む」ことで、歯に力がかかります。このとき、歯の根っこ(歯根)や歯ぐきには、力の変化を感知する細かいセンサーのような感覚器官が存在しています。これらが「どれくらいの力で噛んでいるか」「食べ物の硬さはどの程度か」といった情報を脳に伝えているのです。
さらに、噛む動作に連動して働く顎の筋肉にも、筋肉の動きを感知するセンサーがあります。これにより、脳は「どのくらいの力を加えて食べているのか」「どんな噛みごたえがあるのか」といった情報を統合し、私たちは“歯ごたえ”という感覚を体験しているのです。
つまり、歯にかかる圧力と、顎の筋肉の動きや力加減が合わさることで、歯ごたえを「感じる」ことができるというわけです。
入れ歯になると食事が味気なくなる理由
「入れ歯になると、食事が美味しく感じられなくなった」とおっしゃる方がいます。味覚自体は舌で感じるため、同じ料理を食べていても“味”は変わらないはずです。
それでも「美味しさが違う」と感じてしまうのはなぜでしょうか?
答えは、先ほど述べた「歯ごたえ」にあります。
入れ歯になると、歯根や歯ぐきに備わっていた感覚器官が機能しなくなります。そのため、食べ物を噛んだときの圧力や、細かな歯ごたえの感覚が脳に届きにくくなり、「噛んでいる実感」や「食感の違い」を感じづらくなってしまうのです。
同じ味の料理を食べていても、「噛みごたえ」や「食感」が得られないと、食事の満足感は自然と下がってしまうのです。
自分の歯で噛めることの大切さ
日本では「8020運動」という取り組みがあります。
これは「80歳までに自分の歯を20本以上残そう」という健康推進活動です。20本の歯があれば、ほとんどの食べ物を問題なく噛むことができると言われています。
私たちが毎日の食事を美味しく、そして楽しく続けるためには、できる限り長く「自分の歯」で噛めることが大切です。
そのためには、歯を失わないように予防とケアを心がけることが必要不可欠です。
歯のメンテナンスで「噛む幸せ」を守る
近年では、「将来のために歯を大切にしたい」「健康寿命を延ばしたい」と考える方が増え、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けたり、歯並びの改善のために矯正治療を選択する方も増えてきました。
矯正治療は、見た目の改善だけでなく、磨き残しの少ない状態をつくりやすくすることで、虫歯や歯周病の予防にもつながります。つまり、「自分の歯で噛む」という幸せを長く保つための選択肢の一つと言えるのです。
まとめ
「歯ごたえ」は、味や香りと並ぶ“食事の楽しさ”を構成する大切な要素です。
しっかり噛めることは、健康的な食生活の土台でもあり、心の満足感にもつながっています。
今一度ご自身の歯の健康状態を振り返って、「しっかり噛めているか?」「お手入れは十分か?」を見直してみてはいかがでしょうか。
「どうケアしたらいいかわからない」「最近歯の調子が気になる」といった方は、いつでもお気軽にご相談ください。