Vol.3 No.328 自動車内装材の新動向−現状と展望−
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≪本格化する自動車の環境シフト≫
【環境に突き進む自動車メーカー】
日本政府は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと宣言しており、自動車各社も大枠で政府と足並みを揃えている。
カーボンニュートラルを実現するには工場のエネルギー利用を見直すことも必要であり、トヨタは2035年に世界の自社工場におけるCO2
排出ゼロを目標に掲げている。VW社、GM社、フォード社なども、2030〜35年に自社工場を再生可能エネルギーのみで稼働させるとしている。
また、LCAの観点から部品メーカーの協力も必要であり、日本ではトヨタ、本田などが協力企業を中心に目標値を設けてCO2排出削減を要請している。
欧州の自動車メーカーは数値目標にとどまらず、具体的かつ強い要請を部品メーカーに出している。VW社はEV(ID.3)の部品生産では再生可能エネルギーを
使用するよう指示しており、ポルシェ社は部品製造時に再生可能エネルギー以外の電力を使用した場合は将来的に契約を締結しないとしている。
メルセデス・ベンツ社は、2039年にカーボンニュートラル未達の部品メーカーは取引先から除外することを表明しており、約2,000社の部品メーカーの
75%以上が覚書に署名している。
欧米の大手部品メーカーは日本に比べてカーボンニュートラルへの取り組みが早く、マグナ社(カナダ)は2030年に、オートリブ社(スウェーデン)は
2040年にカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げている。日本の大手部品メーカーは自動車メーカーと同様に2050年の実現を打ち出しているが、
デンソーは2035年に自社工場から排出されるCO2をゼロにするという意欲的な目標を掲げている。自動車メーカーがライフサイクルでのカーボンニュートラルを
達成するには部品メーカーの協力が不可欠であり、大手、中堅を問わず部品メーカーのカーボンニュートラル実現が求められている。自社工場の
カーボンニュートラルでは欧州の部品メーカーが早い段階で実現している。ボッシュ社は2020年に400ヵ所の自社拠点でカーボンニュートラルを達成しており、
コンチネンタル社(ドイツ)も2020年に自社の生産拠点で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えている。日本の部品メーカーは日立Astemoが2030年に、
デンソーが2035年に自社工場をカーボンニュートラルにすると宣言しているが、これらは国内での取り組みとしては早い方である。
自動車産業はかつての系列という概念が崩れ、テスラ社や中国企業の台頭、アップル社やファーウェイ社など大手IT企業の参入で、業界地図が大きく変わりつつある。
このような状況下で自動車部品メーカーが販売先を拡大していくには、カーボンニュートラル対応で先行することが必須である。カーボンニュートラルに対応
できない企業は、将来的に自動車メーカーのサプライチェーンから除外されるであろう。自動車内装材の部材メーカーも例外ではなく、カーボンニュートラルが
市場に生き残るための必要条件となっている。