Vol.3 No.320 医療・衛材不織布&製品の最新動向
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≪新型コロナで激増したマスク、ガウン、ウェットティッシュ≫
【感染対策と不織布製品の需要拡大】
新型コロナの感染拡大によってマスク、医療用防護服・ガウン、除菌用ウェットティッシュなどの需要が急増し、
需要規模は通常の数倍にのぼった。マスクには産業用の防じんマスク、医療用のN95マスクやサージカルマスク、
家庭用の不織布マスク、布マスク、ウレタンマスクなどがあるが、感染対策として需要が拡大したのは医療用と
家庭用である。中でも不織布マスク、N95マスク、サージカルマスクなどの不織布製は従来から輸入品が大半を占め、
輸入への依存度が高かった。新型コロナでその輸入品が激減し、国内の医療機関や一般市場は深刻なマスク不足に
落入った。政府はマスクの国内生産を拡大させるため補助制度を設けて各社に製造設備の導入を促し、マスクの増産
を図った。20年の後半にはマスクの輸入が増加し、国内生産も拡大したことから市場のマスク不足は解消された。
20年の実質的なマスク需要量は布マスク、ウレタンマスクを含めて200億枚を超えたとみられ、末端価格ベースの
市場規模は4,300億円に達したと推定される。19年の市場規模は700億円程度とみられるため、20年は6倍程度に
拡大したことになる。
マスクとともに需給が逼迫した不織布製品はアイソレーションガウンである。国内におけるアイソレーション
ガウンの需要量は、新型コロナの感染前は年間700万〜900万着程度と推定されるが、20年の需要量は1.2億〜1.3億着
と10倍以上に拡大したとみられる。20年は政府の要請に応じて既存設備を活用しながら増産した企業が多く、国内の
生産能力は一時的に3,700万着/月に達した模様である。その殆どは緊急時の要請に応じたもので、新型コロナの感染
が終息した後も生産を継続する企業は殆どない。ただ、政府の補助金で設備を導入した企業は将来的にも生産を維持
していくとみられる。21年も新型コロナの感染者数は衰えていないため、アイソレーションガウンの需要量は1億枚
程度になると予測される。
除菌用ウェットティッシュも新型コロナの感染拡大によって需要が急増した。除菌用ウェットティッシュは輸入量
が激増しており、19年の17,763トンが20年は112,962と6.4倍に拡大した。輸入額も19年の72億円から20年は532億円と
7.4倍に増大している。国産品を含めた除菌用ウェットティッシュの市場規模は990億円と推定される。