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平成22年 1月号 No.73



魚屋鮨鉢盛り




日本のお正月では「おせち」が常識だが、そもそも「おせち」とは何ぞや。

おせちの由来は、宮中の「お節供(おせちく)」からきているらしい。

お節供は1月1日、7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日といった節日に、神への神饌(しんせん)を供えることである。

おせち料理は、この「お節供」のしきたりが民間に広まったもので、正月にふるまわれる御馳走が「おせち料理」と呼ばれるようになった。

お正月は年神様をお迎えしお祀りする儀礼であり、料理を作り置きするのは、年神様がいらっしゃる間に煮炊きすることを慎むことから由来しているが、お正月に女性を日頃の家事から休養させるためでもあるらしい。

おせち料理は「作り置き」をするために、煮たり、焼いたり、酢締めにしたり、という風に、料理を長持ちさせるための工夫がなされているのが普通である。

ところがこのところ、このような作り置きのために、醤油や砂糖で濃い目に味付けされた料理が敬遠されていて、特に最近の若い人達はおせち料理の中身を必ずしもご馳走として、有り難がらない傾向があることも事実である。

おせち料理そのものは今も形を変えながら存在しているものの、作り置き料理だけでは満足出来ず、別の贅沢な料理を求める人達がいる。

それは、作り置きという保存に適した料理ではなく、逆に「保存は全く利かない新鮮な料理」を正月から求める傾向である。

例えば刺身や鮨といった高いレベル鮮度を要求する料理を、元旦から要求するというのは作り置きとは別世界のものなのだが、今の時代において、それは求めれば可能となっている。

それが可能になったのは、そのようなものを提供する店が、正月の元旦から開いているからなのである。

実は筆者自身、今年の正月は家庭用に1万円の魚屋鮨を注文した。

巻頭写真は筆者のように、年末ではなく年始に鮨鉢盛りを注文する、新たなニーズに対応した商品の提案である。

これは筆者自身が、ある企業で鮨鉢盛りを試作する機会があったけれど、結局商品として日の目を見ることがなかったものを使用している。

かつての年末商戦というのは、正月は商店も店を閉めていることから、買い溜めのニーズによって盛り上がっていたのだが、筆者が元旦に魚屋鮨を注文したように、正月も店が開いていることから、正月に「作り立ての魚屋鮨」を購入出来るようになっているのである。

コンビニエンスストアの年中無休24時間営業から始まった、

日本の商慣習と営業時間の変化はスーパーにも拡がり、年中無休24時間営業は、全国何処でも珍しいものではなくなっている。

今や高級高額品の消費不況に見舞われている百貨店でさえも、過去は正月の3日間は店を閉めているのが普通だったのに、少しでも売上げを・・と、元旦から店を開けるところが増えてきている。

昨今の魚売場の年末商戦は、こういう時代になったことによって、かつてほどの爆発的な売上げが、年を追うごとに期待出来なくなり、年末商戦の売上げの山は低くなり、逆に年始商戦の山が高くなって、その高低差はどんどん均されてきてしまっているのである。

こういう「時代の変化」というのに対して、敏感に対応していくことが「商売の宿命」というものであろう。

「小売業とは変化対応業である」と看破した人がいたが、まさにその言葉には商売への卓見という重みがある。

魚屋の商売も「時代の変化」に対応してかなければならないのだ。

例えば、巻頭写真の魚屋鮨はいくらの売価が相応しいであろうか。使用している容器は高価なプラスチックトレーなので、容器代だけで500円ほどは覚悟しなければならない。

最近流行のとは言っても随分となるけれど、宅配寿司専門店があるが、そこで使っている容器は回収制だから、容器代500円も計算しなくて良い。

宅配寿司のチラシから推測すると、このカン数、この内容であれば、8,000円から10,000円の間の売価に落ち着くと考えられる。

こういう売価でも、お客様は寿司屋と比べると便利で安いと喜んでいる。

宅配寿司というのは、街の寿司屋さんに出前を頼むと、「やたらに高い」というお客様の不満を一手に引き受けて、街の寿司屋さんから、そのシェアーを奪って伸びてきたのである。

こういうところに魚屋鮨の潜在的なニーズがあるのだ。

魚屋鮨であれば、巻頭写真はどんな売価に落ち着くだろうか、通常の値入れ率であれば、4,000円前後というところであろうか。

たぶん余裕で宅配寿司の半値の売価をつけることは充分に可能である。

その宅配寿司の売価も配達料込みとは言え、魚屋鮨の売価と比較すると「非常に高い」となるのだ。

もちろん、商品の売価を高く感じさせない手法として、巻きものやイナリを入れ込むことでボリュームを出すのは常套手段で、それは街の寿司屋も宅配寿司専門店も変わりはない。


魚屋鮨の場合は、この写真のように巻き鮨を入れるにしても、海鮮巻きを比較的安く入れ込むことが出来るので、この中トロ入りでも、3,000円前後の売価も可能となるが、宅配寿司なら6,000円以上はまず間違いないと思われる。

こうやって比較してみると、魚屋鮨の価格的な優位性というのが、次第に明らかになってくると思う。

これは飽くまでも「宅配寿司に劣らぬネタのレベル」を前提にしたもので、惣菜の冷凍ネタのにぎり寿司と同レベルで比較されるような魚屋鮨を、対象にしてのことではないことは確認しておきたい。

最近は魚屋鮨が売れなくなってきたと嘆くところも多いが、その原因のほとんどは「惣菜寿司とどこが違うの・・・」と問われても、これにまともに反論出来ないような低いレベルの冷凍ネタを使用して、平気で「魚屋鮨」を名乗っているからではないのか・・・。

このところ、スーパー各社はネットショッピングに力を入れており、各家庭への宅配を強化しているところも多い。

そのような宅配の仕組みと設備を持っているところは、まさに宅配寿司のほぼ半値の売価で「美味しい魚屋鮨」を、宅配エリアに届けることが出来るのである。

考えれば考えるほど、この潜在的なニーズの可能性の高さを、感じざるを得ないではないか。

「注文があって、製造し、届ける」という手法が軌道に乗れば、何と「ロス率はゼロ」なのである。

ロス率がゼロならば、店頭のリスクヘッジを含む値入れ率というのは、もっと低くして売価を下げることも出来るではないか。

上記写真の4,000円や3,000円前後の商品が更に安く出来るとすれば、更に素晴らしい競争力がつくのは間違いない。

このようなことは、店頭に商品を陳列してお客様の来店を待つ、という従来発想から抜け出さないと理解出来ないであろう。

この潜在的ニーズをどうやって掘り起こすことが出来るか、これは各社の取組み姿勢一つにかかっているのだが、忘れてならないのは、その商品内容の価値である。

何と言っても「商売はまず商品ありき」なのだから、お客様が注文して良かったと、価格だけではなくその内容にも、高い評価をしていただき、次のリピートにつながるような、価値ある商品を造ることが出来なければ何事も始まらない。

今年も、価値ある商品によってお客様の高い満足度を得るために、是非このFish Food Timesを活用していただきたいものだ。

読者の皆様のために、何か少しでもお役に立てれば幸いである。



更新日時 2010年 1月 1日 (金)

 

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