株式会社 構造ソフト

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■偽装事件とその後の新法の運用について


構造計算書の偽造事件についてのコメント

[印刷用] 【PDF 175KB】
2005年11月22日(火)
株式会社 構造ソフト
代表取締役社長 星 睦廣




 構造計算書の偽造事件が、先週末から新聞やテレビを通して大きく報じられました。
 多くの建築関係者の方は「あってはならない事で信じられない事件」として受け止められたことでしょう。本事件に関する内容はテレビ等で詳しく報じられていますのでここでは割愛致しますが、ユーザー様から多数問い合わせを頂いておりますので、ソフト会社として本事件と関わることについてコメントを述べさせていただきます。



1.弊社プログラムの関わりと改ざん防止について


 ユーザー様からの問合せで最も多いのがこの事件と弊社プログラムの関わり具合の質問でした。

 今回報道されている一連の物件において弊社のプログラムは使用されておらず、関係しておりませんことを最初にお知らせ致します。
 
 また、民間の確認審査機関や特定行政庁からは、計算結果の改ざん防止についての問い合わせを数多く頂きました。

 弊社の大臣認定プログラムの使用において、大臣認定番号や性能評価番号が構造計算書に出力されるケースの場合には計算結果を改ざん出来ないように計算結果ファイルに対しプロテクト(暗号化)が施されます。それゆえ計算結果を修正することはできない仕様になっております。このようなプロテクトは、大臣認定プログラムおよび性能評価プログラムのように審査を受けたプログラムに対しては当初から施しているものです。

 OSがMS-DOSの時代に、構造計算書を印字せずに画面で確認出来るようにしたのは弊社が最初であったように記憶しています。その当時から(財)日本建築センターの審査を経た弊社プログラムには、上述したプロテクトを施しております。



2.大臣認定番号・性能評価番号の出力とその意味

 構造計算書に出力される大臣認定番号や性能評価番号に関する問合せが非常に多いので以下に説明させていただきます。 

 大臣認定プログラムの特徴は、構造計算の検証結果において一つのNGもなく全てOKであれば、構造計算書の全てのページのヘッダー(一行目)部分に大臣認定番号と計算終了時の時刻が印字されます。この大臣認定番号の意味するところは、構造計算書が簡略化できかつ審査も短縮化できるという特典が得らることです。すなわち「構造計算書(その1)」と呼ばれる代表架構のみの計算結果出力で済み、通常の構造計算書(全架構の計算結果出力を要し、これを「構造計算書(その3)」と言う)に比べて大幅に「図書の省略」をすることができます。(法的には建築基準法・施行規則第1条の3第1項の「図書の省略」を参照のこと)

 このような大臣認定番号の出力がある簡略化された「構造計算書(その1)」に対する受付とそれに伴う迅速な審査は、まだ始まったばかりで物件数はとても少なく、多くの物件においては、詳細出力である「構造計算書(その3)」が確認申請時に提出されているのが現状です。

 「構造計算書(その3)」は、法の目的の「図書の省略」が出来ない時の出力であるため大臣認定番号は出力されず、そのかわり性能評価番号が全ページに出力されます。

 また、大臣認定番号も性能評価番号も出力されない構造計算書もあります。 
 これは検証結果にNGがある場合だけでなく、検証結果が全てOKの場合でも起こることがあります。

 これは、大臣認定の適用範囲を超えてプログラムを使用した時です。
 例えば高さ60mを超えた建物の場合は、大臣認定の適用範囲を超えておりますが、プログラムはそれ以上の建物規模でも対応できるように作られています。このときは大臣認定番号が出力されず、「構造計算書(その1)」だけで済む「図書の省略」の特典も受けられないことになりますから、「構造計算書(その3)」で申請することになります。このように建物の複雑な形状や特殊な部材にも対応できるようにプログラムの適用範囲は広いわけですが、一方において大臣認定番号が出力されるときの適用範囲はそれより狭いことに起因して、大臣認定番号の出力有無が関係してきます。

 尚、大臣認定の適用範囲を超えて使用した場合は、エラーメッセージ等が出力されますので、構造設計者は「チェックリスト」に工学的判断を示すコメントを記述することになります。

 最後に「構造計算書(その2)」について説明しますと、これは大臣認定プログラムでは計算できない部分を、他のプログラムや手計算で対処する部分で、「構造計算書(その1)」または「構造計算書(その3)」に必ず添付して確認申請時に提出する図書です。



3.大臣認定番号・性能評価番号の出力フロー

大臣認定番号・性能評価番号の出力フロー



4.構造技術者の信頼失墜と今後の信頼回復を目指して

 姉歯建築士のテレビ放映でのコメントは、社会に対して構造技術者の信頼を失墜する言葉があり、同業者として頭を抱えてしまった方も少なくないかもしれません。

 私が知る多くの構造技術者は正しくないことを容易に許容するなどしない頑固さがあり、社会において最もまじめな方々がこの仕事に従事しているとの認識です。

 その中にあって今回の事件は、構造技術者の信頼の失墜という点で計り知れないものがありそうです。(社)日本建築構造技術者協会を始め、構造設計に関わる多くの団体は、構造技術者の社会的地位向上に対して努力してきましたが、この一つの特異な事件で振り出しに戻ってしまったかもしれません。

 本事件は建物の耐震性に対する疑惑と不安を社会に抱かせたという点で許しがたい事件であります。
 この事件の社会に与えた影響がとても大きいため容易に収束しないと思われますが、それゆえ信頼ある大多数の構造技術者の皆様は静観しているだけでは済まない状況下になりそうです。

 この暗い事件の中で構造技術者の前途に一つの光明を見出すとするなら、それはこの事件を通して長時間にわたるテレビ報道と詳細で分かりやすい解説を繰り返しテレビ放映しているため、設計事務所と構造事務所の位置づけや構造技術者の存在とその役割が社会に明らかになったということです。
 今後、施主やマンションを購入しようとする住民の方は、「構造計算は大丈夫ですか?」、「この建物の耐震性能はどのくらいですか?」、「構造技術者と直接話ができませんか」と問いかけてくるでしょう。

 この事件により構造技術者の全ての方は、社会的な信頼回復を取り戻す義務を負いました。
 今こそ構造技術者は語らないといけない状況におかれています。どうかこの状況下で静観せず、率先して語り始めて、信頼の厚い構造技術者がとても多くいることを世に知らしめて頂きますよう、皆様方のご活躍をご期待申し上げます。

 最後になりましたが、今回の事件を通してプログラムの役割やそれが与える影響の大きさも痛感いたしました。ユーザーの皆様に優しいソフトでありながらも、誤った使い方を未然に防ぐ処理を施しながら、バランスのよいソフト作りを目指していきます。皆様方の相変わりませぬご指導・ご鞭撻を今後ともよろしくお願い申し上げます。

代表取締役社長 星 睦廣




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